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「けどごめんね。仕事に穴開ける訳にはいかないから…少しだけ待っててくれる?」
「…それは、もちろん」
「ありがと」
前髪を掻き上げて額に軽く口付けをされる。
いつものようにダボダボのパーカーを着てとても働いてる時と同一人物と思えないような気だるさで家を出ていった。
ただプリント届けに来ただけなのに急遽泊まることになるなんて…
「あ、そうだプリント…」
すっかり忘れてたものをカバンから取り出して机の上に置いておく。
…どうしよう、泊まるつもりなんてなかったから部活終わりのままだし着替えとかないし汗臭いし…
とりあえずシャワーは借りようと思って慣れ親しんだバスタオルを拝借した。
風呂場のドアを開けたらさっきまで玖音が入ってた温かさがほんのり伝わって甘い匂いがする気がした。
(…あー、やばい、変態っぽいな俺…)
頭を横に振って思考を飛ばして蛇口を捻った。
ここで過ごすのも慣れてしまった惚気がヒシヒシと身に染みる…
たまに家で一人でいることに違和感を覚える時があって、それくらい玖音がいる生活が当たり前になったんだなと実感していた。
お互いの部屋にお互いのものが少しずつ増えて、一緒に暮らしてるみたいで…乙女みたいな思考に犯される。
もう自分の家みたいな感じだもんなあ…
なんて考えていたからすっかり気が緩んでしまっていた。
適当に身体を洗って適当に玖音のスウェットを借りてタオルで髪を乱雑に拭いていたら部屋にチャイムの音が響いた。
「あ、はーい、…どしよ、風呂上がりなんだけど…」
それより以前にここは玖音の家だから出る必要なんてない。そんなこともすっかり頭から抜け落ちて呼ばれるままにドアを開けて、驚いてる彼女と目が合ってやっとここが自分の家じゃない事を思い出した。
「ごめんおにいさっきの紙袋に財布入れっぱな…」
そこまで言って俺を見上げて時音ちゃんの言葉が詰まった。
お互いしばらく無言で見つめ合う。
時音ちゃん戻ってくるなんて…てゆか何俺普通に出ちゃったんだよ…!
「……なんで、黒田さんが出るの?」
「あ…っと…」
「おにいは?」
「…少し前に仕事行った、よ?」
じゃあなんでお前はここに居るんだって顔をしてる。
そりゃそうだよな。普通に考えて家主がいないのにいるなんて可笑しいよな…
時音ちゃんはしばらく考え込んだようで凛とした目で俺を捉えた。
「おにいとどんな関係ですか」
確信を突かれて戸惑った。
心臓がドクドクと脈を打つ。
どうしよう、どうしよう!
…なんて答えたら…そもそも玖音が家族に話してないことを俺が言えるわけない。
「…同級生、友達だよ」
必死に頭を回転させてやっと出てきた言葉。
それが一番無難な答えだと思った。
けど時音ちゃんの目は揺らぐことはなくて真っ直ぐ俺を捉える。
「嘘」
「…え」
う、嘘?
嘘なんて…
「おにいが、ただの友達に留守中任せるなんてするわけない。ちゃんと答えて」
急に強くなった意志に、目に怖気付いてしまう。
ごく、と喉が鳴った。
…腹括るしかないのか…?!
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