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夢を見た。
夢…というかあの続きみたいな現実味のある悪夢。
「う…うぅ…」
押さえ付けられて無理矢理犯されて泣いて叫んで、でもどうしようもなくてされるがままに抱かれ続ける。
痛くて怖くて魘されてる自分の声で目が覚めた。
「っ!…は…、はぁ…」
カーテンから朝の光が透けて辺りは明るくなっていた。
特別厚着をしてるわけでもないのに汗がびっしょりで肌を伝う。
…しばらくこうやって嫌な現実に魘されるんだろうか…
とにかく汗で気持ち悪かったから洗濯物の中からタオルを引っ張って首元を拭う。
そこでやっと気づいた。
(……ネックレスがない…)
パッと胸元に手を当てて確認したけどいつもあるはずの感触がなくて周りに落ちてないか確認したけどやっぱり無かった。
血の気が引いていって体温が下がるのがわかった。
…まさかあのホテルで落とした…?
それとも無理矢理押し込まれた車の中?
「和くん?」
「っ!」
ドアが少し開いて俺より早く起きてたであろう玖音がひょこっと顔を覗かせる。
動いたから起きたのがわかって心配してくれたんだろう、汗びっしょりで不安そうな表情を浮かべてる俺を見て腰を上げて近くに来てくれた。
「汗凄い…大丈夫?」
「……くお…」
止まってる手に握られてたタオルを抜き取られて身体を拭いてくれる玖音を見つめた。
「……ネックレス、落としたかもしれない…」
せっかく貰ったものなのに。お揃いなものなのに。
なくしてしまうなんて…
気まずいけど、俺一人じゃあそこに行くのは怖いから玖音に縋るしかなかった。
けど玖音はわかってたみたいな顔をして放置していた俺の携帯を俺の目の前に見せてきた。
「…?」
覗き込んだらそこには俺が意識なくしてる間に勝手見られたのか知らない番号からショートメールがきていて内容は
《黒田くんの大事なもの預かってるよ》って送られていた。
最初から取られてたのか落としたのかわからないけど桃瀬が持ってるってことがわかって、なくしてなかったという安堵と桃瀬に握られてしまったという不安でごちゃごちゃになる。
メールを見て俯いてる俺の頭にぽん、と手を乗せられて顔を上げた。
「任せて」
「…え…?」
意味がわからなくて首を傾げて、しばらくして気づいた。
玖音がコートを着て出かける準備をしてる事に。
「…まさか、アイツのとこ行こうとしてる?」
無言は肯定を意味する。
「だめ…!」
それがわかって行かせるわけにいかないからぐっと腕を掴んだ。
「桃瀬は…アイツは、手段を選ばない、金もあるから変なヤツらとつるみもあるし何されるかわかんない…」
そんなとこに玖音を一人で行かせるなんて嫌だった。
…玖音まで何かされるなんて嫌だ。
「だから僕が行くんでしょ。和くん行ったらまた捕まるじゃん」
「…でも」
「大丈夫だから」
ふっと微笑んでぐしゃぐしゃと髪の毛を撫でられて立ち上がって離れていく。
…行かないで、 お願い…
「玖音…っ!」
玄関にいる背中に向かって名前を叫んだ。
振り返った身体に思い切り抱きつく。
ちゃんと受け止めてくれて身体を支えられる。
「…ひとりにしないで…」
全部怖い。
玖音をひとりでいかせるのも、自分がひとりになるのも。
「和くん」
肩を優しく押されて目が合う。
「お願い。待ってて。会わせたくないの」
優しいだけじゃない強い意志を持った目が俺を射抜く。
俺には何も言わないけど、やっぱり怒ってるって気づいた。
…当たり前なことだけど…
するりと力が抜けてその場に座る。
…怖いけど、行かないでほしいけど、頷くことしか出来なかった。
「…すぐ帰ってきてね」
「うん」
「…怪我とか、危ない目とか…気をつけてね…」
「わかったよ」
ネックレスはもちろん大事だけど玖音になにかあるくらいならなくたっていい。
だから無理だけはしてほしくない。
どうか無事に帰って来れますように…そう願うことしか出来ない自分が無力で情けない。
不安な思いが抑えきれなくて顔に出てたのか眉を下げて笑う玖音が俺の頬を包んで顔を上げさせた。
「僕が信じれない?」
その言葉にゆっくり首を横に振った。
よし、と小さく呟いて瞼に唇が触れる。
「すぐ戻る。約束」
小指を出されてそれに自分の小指を絡めた。
軽く上下に振ってする、と離れていった。
「い、いってらっしゃい…!」
部屋を出ていく背中に咄嗟に出た言葉。
それだけなんだけど玖音が嬉しそうに振り返った。
「なんか新婚さんみたい」
「…え…」
新婚…って
「…!!」
「いってきます」
一拍置いてから顔が一気に熱くなって真っ赤になる。
口をぱくぱくさせる俺を可笑しそうに笑ってひらひら手を振ってバタンとドアが閉まった。
…いいように大人しくさせられた気がする…!!
いなくなったその後もしばらく熱が引けなくてその場から動けないでいた。
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