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…風の噂によると、バンドで演奏しているのはJPOPらしい。
白摩は楽器に明るくないのでよくは知らないが、白摩の伴奏に使うフォークギターを一本持っているのだけは知っている。
ぶっちゃけ、白摩は歌に興味がない。ただ、幼馴染が自分の歌唱を褒めてくれるから歌っているだけだ。
「…~♪」
自分の声が空気を震わせる。歌唱とは白摩にとって、心底不思議な存在だった。オーケストラは楽器を鳴らす。歌手は自らの肉体を吹き、爪弾き、鳴らす。
ご近所付き合いもあるので、歌はささやかなものだ。一番ですぐに終わってしまう。エンディングを迎えると、音の余韻を聴き終えた佐々は一度肩を大きく震わせ、ふぅと息を吐く。彼は白摩を眺め、瞳を細めて静かに微笑む。ちょっぴり寂しげにも思える笑顔は、白摩の大好きなものだ。
「…ありがとう。」
真心のこもった礼に、白摩は相手を直視できず、急いで背を向ける。
「そっか。…っじゃ、おやすみ!!」
「ああ。…明日は学校絶対来いよ!!」
幼馴染の早口を聞き終えると同時に、窓をピシャリと閉める。白摩は続けて、カーテンを荒々しく締め切ろうとして…寸でで躊躇い、隙間から外を覗く。
隙間から、幼馴染が肩を落とし、やれやれという雰囲気で部屋に戻っていくのが見える。数分とせずに、先程まで照明のついていた佐々の部屋が暗くなる。
「寝た、のかな…。」
ぽつんと呟いて、白摩は自分のベッドに戻る。掛け布団を腹に引っ掛け、自分も明日に備えてと目を瞑る。…が、やがて瞳はうっすらと開く。ベッド脇に置いていた鞄を漁っていたところで、ドアがノックされる。ギクリ、と白摩の全身が硬まる。
「…春太君??春太君??…何か物音が聞こえたけど、起きているの??」
白摩はギリッと奥歯を噛み締め、手近にあった枕をドアに向かって投げつける。
「うっせぇな、腐れババア!!捨てられたビッチは黙っていろ!!」
音にビックリしたのか。返ってきた声は震えていた。
「…ごっ、ごめんなさい!!ごめんなさい!!ママ、そういうつもりじゃなかったのよ??春太君の気に障ったのなら謝るから…。本当にごめんね。ごめんなさいね…。」
終盤から啜り泣きが聞こえてくる。白摩は舌をべろんと垂らす。煩い女だ。ヒステリーを起こして、すぐ騒ぎ出す。
一頻りの泣き声がやむと、母親は再び話しかけてくる。
「…春太君、夕飯まだでしょう??」
「食欲ねぇよ。」
白摩は手近にあったノートパソコンに目を戻す。年増と話すなんて退屈極まりない。
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