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小うるさい母親より、オンラインゲームに興じている方がよっぽど有意義だ。
「きょ、今日は春太君の好きなものばかり作ったの。」
「てめぇが作った不味ぃ飯なんか食うわけねぇだろ。」
青白い光が、無感情な白摩の横顔を照らし出す。扉から聞こえる声は、まだ止まない。
「少しでもいいからお腹に入れて。ご飯、ラップをかけて、ここに置いておきますからね。」
「いらねぇっつってんのがわかんねーのか、この役立たず!!」
怒鳴ると、啜り泣きがまた聞こえてくる。うるせぇと一喝すると、泣き声はぴたりとおさまる。
「…ここに、置いておくからね。」
お腹が空いたらでいいからね、と付け足して、女の足音が階段を下っていく。白摩は堪らず、扉に向かって怒鳴る。
「さっさとくたばれ、糞ババア!!」
部屋の空気がビリビリと震えるほど叫んだので聞こえているはずだが、返答は一切なかった。
「…ったく、興ざめ。」
白摩は冷めた声で呟くと、ノートパソコンを閉じてベッドに仰向けになる。鞄から目当ての定期入れを取り出し、定期裏に隠している写真を取り出す。そこには、幼馴染の写真がある。彼の画像だけ引き伸ばしたおかげで違和感は否めないが、白摩は彼の笑顔に頬を緩める。
先程聞いた幼馴染の声を脳内再生して、白摩は写真の顎のラインを人差し指でなぞりつつ、意中の人の名前をそっと呼ぶ…。
「ミチ…。ミチ…。大好きだよ…。」
白摩が自分と人の違いを思い知らされたのは、小学校に上がりたての頃だった。PTAの授業参観。白摩は一人っ子なのに関わらず、自分の母親が他より年上であると気がついた。
ずっと後になって知ったことだが、両親はずっと不妊治療をしていたらしい。ようやく生まれたのが、白摩だった。
やっと産まれた長男。たった一人の息子。理由が重なって、母親は愛情をうんとかけた。子に恵まれなかった期間のイザコザが原因か。父は白摩が小学校にあがる前にある日を境に忽然と姿を消してしまった。母子家庭でもしっかり育てなくては、と母親の教育ハードルはまた一段階上がってしまった。母親の焦燥感など知らず、白摩は育っていった。
小学校の高学年まで、基本衣服は母親に着させてもらっていた。靴紐の結び方など覚えなくてもよかった。食事は好物しか食卓に並ばない。欲しい玩具は何だって買い与え与えられた。床に座り込んで抗議した記憶など一つもない。
けれども、贅沢はし続けられるものではなかった。幼稚園では成り行きに流されがちな園児たちだったが、小学校になると生徒もさすがに善悪の判断がつくようになる。
『白摩くん、イジワルー!!』
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