アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
6
-
誰ともなく言い出し、当時の白摩のあだ名は”イジワルくん”になった。悔しくて母親に告げ口する。母親は顔から出すものを全力で出している息子に、悪くないと言い聞かせ、背中を撫で続けた。
”イジワルくん”呼びは一時的なもので次第に下火になっていった。けれども、一件で衝撃を受けた白摩は胸の内でこっそりとクラスの連中を見下すようになっていく…。
小学校高学年になると、自分は周囲から物静かな子、と判別されるようになった。否、心の中では文句を言い放題だが、賢い自分は決して口には出さないから、大人しく見えるだけだ。
周りを眺めると何となく、自分の変化を軽んじている者が目に付く。大人しいからどうせ誰にも明かさないだろうと自分を小馬鹿にした態度にでる。
腹立つ。
苛々するから、片っ端から殴っていった。先生生徒、男女関係ない。母親が学校に呼ばれる回数が増えた。低学年の頃、モンスターペアレントの典型だった母親は、欠片も見いだせない。当時の自分は、誰がどう見ても手のかかる悪童だった。
幾ら校内で揉め事を起こしても、母親は決して手をあげることはなかった。…ただ、呼び出しを受けた学校の帰り道は、絶対に白摩と手を繋いで帰った。ババアの手なんか気色悪ィと大声で喚く白摩に、母親は目だけで笑う。あら、照れちゃって。…口を一文字に結んで、笑う。白摩にとって母親の愛情とやらは、正直鬱陶しくて気持ち悪くて仕方なかった。何度振り払っても伸ばしてくる。まるで、自分は母のコマだった。
あら、そっちへ行っては危険、あっちは大変よ。こっちにしましょうね。ご機嫌取りの猫撫で声は神経に障る。心底早くくたばって、俺の前からいなくなって欲しい。
家ではベタベタ撫でられる。学校では爪弾き。…荒んだ心を癒してくれるのは、幼稚園よりずっと前から一緒にいた幼馴染の佐々だけだった。
景道は自分の歌を褒めてくれる。すごい、って言ってくれる。現実の白摩はずっと冴えないのに、綺麗だって言ってくれる。佐々の前でなら、自分は綺麗になれる。
佐々は自分を認めてくれる。だから、白摩は幼馴染が大好きだった。…白摩は、小さい頃から、彼にくっついて離れなかった。
夢だった。
まず、白摩は自分の視点が急激に低くなっているのに気が付く。そこは、寝ていたはずの二階の自室ではなく、一階の廊下だった。…廊下突き当たりのダイニング扉から、微かな物音が聞こえてくる。
振り返ると、見慣れた玄関がある。玄関扉に嵌め込まれたガラスに、白摩の姿が映る。中学生の制服に身を包んだ白摩だ。一年の終わりくらいだろうか。
中学生の白摩は、物音のするダイニングへと進んでいく。靴下をはいた足は、フローリングの床を踏んでもほとんど音がしない。ダイニングの扉を僅かに押し開け、隙間から中を覗き込む。
_
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
6 / 68