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ダイニング奥の一角はキッチンになっている。手前はリビングだ。リビングには、背の高い木製のテーブルと椅子。…淡いオレンジのソファーがテレビ前に置いてある。ソファーの上には、人影が見えた。不気味に蠢く影。中学生の白摩は咄嗟に、過去に特撮で見た怪人を想起していた。
そこにいたのは、二人の人間だった。裸の二人が、折り重なるようにしていた。
「ん…。」
絡み合っていた一人が、体を起こす。照明のついていない部屋。薄暗い中、カーテンから差し込む頼りない日差しに目を凝らす。逆光に阻まれながらも…見えたのは、白摩の母親だった。
(…めろ。)
女はすぐにソファーに倒れこみ、裸身の男の胸に寄り添う。
(…めろっ)
目を剥いたままの小さな男の子は、静かに両手を拳にする…。
「…やめろォォォッ!!」
布団を跳ねのけて、白摩は起き上がる。忙しない呼吸を繰り返しながら、辺りを見渡し、我に返る。
「そ…、そっか。夢、だったんだよな。」
生々しい情景は、昔実際にあった出来事だからだ。ちなみに、あの時は大した知識のなかった俺でも、この場にいてはいけないと察し、自室に逃げ込んだ。
夫は去り、ようやく産んだ子は手に負えない悪ガキ。母が他の男に逃げたい心理は納得できなくもない。…が、中学生にそこまでの心配りはできず、ただただ”母の裏切り”が許せずにいた。今も許せない。…もしも、正統に”新しい父親”として紹介されるのが先だったら、結果は変わっていただろう。
以来、白摩は剥き出しの女の肌が苦手になった。電車で寄りかかられるのを想像しただけで鳥肌ものだ。
「気分、最悪…。」
呟いて、愛用の黒いイヤフォンをベッドの足元から探し当てる。枕元にケータイと一緒に置いていたミュージックプレーヤーにイヤフォンを接続し、再生ボタンを押す。
白摩が好きな曲が耳に雪崩こんでくる。どれもアップテンポな奴だ。楽器の調べが絶妙な配分で合わさり、一つとなって脳内で響き渡る。
音楽を聴くと、白摩は呼吸が楽になる気がする。白摩の瞬いた瞳から、透明な雫が一滴、片頬を滑り落ちていく。白摩は、自らが泣いているのに全く気付かなかった…。
翌朝。卒業式、直前。
卒業式に限らず、式と名のつくものはとにかく人が多い。それでも、幼馴染に言われたら白摩は出向かなければならない。朝から、白摩は苛々していた。
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