アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
8
-
白摩家のダイニングは、照明がオレンジだからか全体眩いほど明るい。木目の床。淡い黄色の壁。二階部分まで届いているだろう天井。カウンター手前がリビング、奥がキッチン。
主な家具は、リビング端のテレビに少し前に新調した薄桃のソファー。テレビカウンター手前…部屋の中央にある四角い木製のテーブルに椅子のセットくらいだ。白摩はテーブルに添えられた椅子に、明らかむっす~っとした表情で腰掛けていた。
母親は母親で、いつになく早起きしている息子に喜びを隠しきれないらしい。キッチンを右往左往しながら、彼女は息子にアレコレと世話をやいてきて、邪魔臭いったらありゃしない。
卓上のデジタル時計は、午後七時ちょうどを示していた。
「し…春太君。トーストとご飯、どっちを食べたい??」
「トースト。」
白摩は棒読み口調で、母親に返事をする。
「た、卵は??オムレツにしましょうか、目玉焼きがいいかしら??それとも…。」
目前に料理を置いていく母親に、白摩はオムレツじゃなきゃコロス、と答えてケータイを弄る。食えるもんなんて正直どうでもいい。そんな大して変わりはしない。
「スーツ、クリーニング屋さんに出しといたから。」
は??、と白摩は密かに口の端を歪めて笑う。ババア、それが一体なに。いい年して褒めて欲しいわけ。口には出さず、黙って頷く。
「春太のスーツ姿なんて、何年ぶりかしらねぇ…。」
母親は透明なボウルから生野菜を特製ドレッシングで和えたサラダを取り分けていく。はいはい、説教ルートですね。読めるわァ~…。アンタの引きこもり息子は、就職活動を全くしませんでしたからねぇ??
「お母さん、一緒に大学まで行っていいかしら??」
白摩は次の瞬間、目前に皿を並べる年増を静かに睨みつけた。視線に気がついた母親が、手にしていたトングを手放して、小さい叫び声をあげる。
「…あ。その、ごめんなさい。お、お母さんが一緒なの嫌なら、行くのやめるから…。」
皆まで聞かず、白摩は片腕を薙いで、卓上にあった皿を床にぶちまける。
「…っきゃ。」
白摩の母親は片足を引き上げ、両拳を口元まで持っていき、わなわなと肩を震わせる。白摩は隠すことなく、声をあげて笑う。母親を指差して、腹を抱えて笑う。
ウケル。ババア、肩を揺らして怯えてやがる。みんな、コイツ今なんて言ったか聞いたか??きゃっ、だってよ!!いい年してさ。っきゃ、とか抜かしやがった!!
豚の餌がなくなってすっきりしたテーブルに伸ばした足を置いて、ちっと舌打ちをする。全身痙攣したみたいにまだ震えていやがる、貧相なババア。
「行かねぇ。俺、もう今日の卒業式に出ねぇから。」
席から立ち上がって身を翻すと、死ぬほどうるさい母親が息子に張り付いてくる。
「お、おねが…っ!!あたしは行かないの!!だから、どうか…っ!!」
_
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
8 / 68