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「わたし、感動しちゃった!!」
「次、《プチモン》のオープニング歌ってぇ~っ!!」
一人がリクエストをすると、止まらなくなる。次から次へと曲名を挙げられる。白摩がどうしたものかと後頭部を掻き毟っていると、ふと自分の背後から声がかけられる。
「お待たせ、ハル。」
振り返ると、そこには待ち人の佐々がいた。両手に自販機で売られているカップコーヒーを手に、瞳を細めている。…今日のファッションは薄手の白いブラウスに臙脂のカーディガン。ベージュのジーパン。黒いニット帽をすっぽり被っている。今にも、ファッション雑誌の表紙を飾れそうだ。上下水色の病衣を着込んでいる白摩とは雲泥の差がある。…病衣は患者に特化した服だから、文句のつけようはない。
「…というわけで、お歌のお兄さんは僕と大事なご用事があるから、今日はここまで。」
後方から両肩をポンポンと叩かれて、白摩がキョトンとしていると幼馴染の言葉を聞いたチビギャラリーがぷぅと頬を膨らます。え~、等ブーイングはあったものの、基本いい子たちなのだろう。早々にその場から散っていった。
「…いやぁ、やっぱお前の歌は良いな。」
入院中の子供たちって大した楽しみはないだろうし、励まされただろうな…と呟きながら、幼馴染は白摩の隣のベンチに腰を下ろす。
「…んで、シンガー君??」
ここでようやく、白摩は気が付く。佐々が、笑顔だ。不自然なほど、笑顔だ。
「お前がここに入院して来て三日。…その間、一度もおばさんの見舞いに行ってないんだって??」
どういうことかな、と清々しいほどの笑顔が白摩に向けられる。白摩は、ええっとうんとと小さく唸る。
「も、物事にはタイミングってもんがあるだろ…。」
「プロポーズじゃねぇんだよ。」
佐々はぴしゃりと相手の言葉を跳ね飛ばす。
「僕はお前に謝れって言っているわけじゃない。おばさんの傍にいろって言ったんだ。罪を丸ごとなかったことにしろとは言わない。せめて、気を許してやれ。」
「ん゛ん゛ん゛~…。」
白摩はベンチに足を持ち上げ、体育座りで深く項垂れる。剥き出しになった項をガリガリと掻き毟って、白摩は唸る。
「…どうしていいかさ、わかんなくなったんだよ。」
やがて、ぽつりと怪我人は口を動かす。
「どうしたらいいか、って…。おばさんに会いに行けばいいだけだろ。」
「違うんだよ。」
ふるふると首を横に振って、少々躊躇ってから白摩は話し出す。血を吐き出すように、喋る。
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