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「…お宅の娘さん、何歳。」
「え??ああ、今年で七歳。小学校二年生だよ。まだちんちくりんでね、歩いている姿を見ていると危なっかしくてしょうがない。手を繋いでやりたくなっちゃうんだよね。」
そう、と小さく頷いて、白摩は問いかける。
「おっちゃん、何歳??」
「え??私??…何歳に見える??なんちゃって~…、うふふ。」
「俺のおふくろ、つい先日死んだんだ。」
暗い話題が出たところで、タクシーが目的地に到着する。下りる前に、白摩は座席越しに運転手の肩を叩いてやった。
「おっちゃんは、かわいい娘さんより前に死んでやんなよ。事故にはあうなよ。」
「あ、ああ…。」
「じゃあな、釣りはいらねぇ。」
どんと一万円札を置き、タクシーを下りる。
峯ヶ屋の自宅周辺は、ブロック塀に囲まれた民家が立ち並ぶ、どこか下町の雰囲気がした。道路を豆腐屋の車が、間の抜けたラッパ音を流しながら横切っていく。ブロック塀の上をとたたっと三毛猫が歩いていく。道路の向こう側で、子供達がきゃっきゃっとはしゃぐ声を聞いた気がする。
辺りは真っ暗だが、どうにか表札の文字は読めた。垣根に囲まれた、古そうな一軒家。確かに『峯ヶ屋』と書いてある。玄関先に行って、ガラス戸の傍にあるインターフォンを押す。すると、中から若い男の声が聞こえてきた。…若い、とは言っても、白摩ほどではない。白摩より一回り上の三十代前後の声だ。峯ヶ屋の声には思えない。
『はい、どちら様でしょう。』
峯ヶ屋でないのを残念に思いながら、白摩は緊張した面持ちで口を開く。
「白摩っていうんだ。どうしても今、峯ヶ屋先生に会いたくて。」
『…少々、お待ち下さい。』
答える声は、何故か幾分活力がなかった。怪訝に思っている内に、玄関扉が開く。…中から現れたのは、百八十センチはあろうかという大男だ。背丈に負けず劣らず、がっしりとした体躯をしている。元ラグビー部であってもおかしくはないガタイだ。
「…じいさんをその名前で呼ぶってことは、君はさしずめ教え子ってとこか??」
男は白いセーターに赤いちゃんちゃんこを上から羽織り、黒いジャージズボンを身につけていた。刈り上げた黒い短髪に、やや強面。怜悧な瞳の持ち主だ。
「…ああ。って、待て、じいさん??…じゃあ、アンタは峯ヶ屋先生の孫なのか。」
大男はさらりと、もちろんと答える。白摩はあっけにとられていた。…言われてみれば、確かにあれから長い時間が経過している。峯ヶ屋にこれほど大きな孫がいたとしてもおかしくはない。
「本来ならこんな夜に訪ねてくる客はちょっと信用ならんが、じいさんの教え子なら、仕方ない。」
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