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振り返ると、そこには佐々の母親が立っていた。…何やら若い男子二人が両脇を囲んでいる。
「佐々のおばさん、っと…??」
小首を捻ると、佐々のおばさんから何事か耳打ちされた二人が近づいてくる。
「初めまして。佐々先輩と同じ軽音部で後輩にあたる榎野といいます。」
語りかけてきた長身の方は亜麻色に染め、肩まで伸びた男の髪はきちんと切り揃えられている。怜悧な漆の双眸。吸血鬼を彷彿とさせる、蝋のように白い肌。おまけに、長身。
すると、隣の小柄な方も焦った様子で一礼する。
「はっ、初めまして!!…佐々とバンドを組んでいた楠田といいます。」
短く刈り上げた茶髪に、パッチリした二重の黒い瞳。身長は百六十前か。顔立ちからすると二十歳前後か。大学生だという前情報がなければ、下手をすれば高校生と間違えそうだ。
「バンド…。」
口の中で呟いて、ニッと笑った白摩は小柄な彼…楠田に問いかける。
「…ちなみに、バンドは楽器、何やってんの??」
「ギター、ッス。」
歯を見せて二ヒヒと笑う小賢しい猿に、我慢できず白摩は拳を振り上げる。
「てめぇかァァァッ!!」
だが、すかさず宙に挙げられた手首は掴まれ、静止する。…長身の、榎野が白摩の顔を捉えたまま、睨みつけてくる。
「…すいません。コレ。俺のもんなので。」
爆弾発言をさらりと投下してくる。呆気にとられている白摩を見て、耳まで真っ赤になった楠田が大声を発す。
「…何でお前はそこでノロケてんだよっ!!」
夜の閑静な住宅外に楠田の魂の叫びが炸裂した…。
どっからどう見ても双方男子の二人は、やはり付き合っているらしい。関係を聞いた白摩は、咄嗟に『キモッ』と叫んだが、楠田の『そうかもね。でも、お互い好きなんだよ』とはにかみながら答えられると、何だか納得してしまう。
初っ端に吹き出す感情をどうにか防げば、白摩はかなり冷静になる。佐々のおばさんの話が本当であれば、楠田は幼馴染の暴力を振るわれた被害者だ。思うと、いてもたってもいられなくなって、白摩は葬儀だ何だで全く掃除していないリビングに客を招き入れる。…お茶は用意できないから、近くの自販機で買った缶ジュースをお盆に乗っけて持っていく。
「…ミチ、バンドでは何をやっていたの??」
白摩の開口一番の質問に、楠田はキョトンとした顔をしてみせる。…物凄く感情が読みやすい男だ。
「ボーカル、だけど…。佐々から幼馴染は同じ大学の生徒だって聞いた覚えがあるんだ。ええっと俺らのバンドって卒業までの四年間、けっこう学祭とかでリサイタルとかやってっけど…。」
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