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「…あなたのお父様に、面会したいと。面会は一度お断りしたのですが…。」
職員がいてもかまわないと言うので立会いのもと一度数時間だけ、と職員が答える。
「…ミチ。」
来ていた。佐々も、この場所に来て白摩の父親に会っていた。
間違いない。佐々はあの葉書を出した張本人だ。白摩は、立っていられなくなってその場に屈み込む。
(ミチは、全部知っていて俺をここに呼んだ…。)
「白摩さん??大丈夫ですか、白摩春太さん??」
女性職員の声が遥か遠くに聞こえた…。
「…で、お前は行方不明の幼馴染を探しに行ったら、その前から消息不明だった父親に会ったと。」
何でそんなドラマチックな展開になるかねぇ、と司は家の玄関先で首筋を掻き毟る。
「うん…。」
「…おい、お前、漫画みてぇに暗いオーラ出てんぞ。」
意気消沈といった雰囲気の白摩を見かねてか。司は肩を竦めてみせる。
時刻は午後七時過ぎ。夕食時を考えてか。司が祖父譲りと思わしき人懐っこく笑いかける。
「おし、じゃあ俺ン家来いよ。飯を振舞ってやるよ。」
白摩は微苦笑を返し、首を左右に振る。
「すいません。…近頃、食欲わかないんです。お気持ちだけ、受け取っておきます。」
「はぁ??…若い者の癖に、食わねぇって大丈夫かよ。」
片眉を顰める司に対して、白摩は自らの胸に手を持っていく。
「…胸がいっぱいで。」
ううん、と一声唸って司は口を開く。
「なぁ。…お前さぁ、今回ばかりは手ェ出さねぇ方がいいんじゃねぇか。」
えっ、と顔を上げる白摩に司は続ける。
「お前が探しているのは幼馴染だろ。小さい頃、お前と母親を捨ててどっかに姿を眩ませた父親じゃねぇか。幼馴染が何を言いたかったかは謎だけど、酷い話、お前が父親を見捨てたって俺はいいと思う。」
大体親のつとめを放棄した男だろ、と司は酷評する。
「まだ小学生にもなっていないお前と妻を置いてどこかに逃げた男だぞ。あと、お前は就職活動やいなくなった幼馴染を探そうとしている。自分のことで手一杯なんだ。他に手が回る状態じゃねぇ。」
「でも…。」
白摩は声をあげかけ…結局口を閉じる。彼の様子を眺め、司は肩を小さく上下させる。
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