アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
58
-
古びたボタン式のチャイムを押すと、中からはピンポーンというはっきりとした音が聞こえてくる。しばらく待っていると、はぁいという声が聞こえてきた。…間違いない。
佐々の声だった。
「どちらさまで…。」
扉を開けた幼馴染は、白摩の顔を見て一瞬硬直したがすぐに自我を取り戻す。…家出以前より、少しだけ髪が伸びていた。
「…ハル。」
小さく名前を呼ばれると、白摩の身体の内に宿る魂が大きく震えた気がした。
「…ミチ、迎えに来たんだ。一緒に帰ろう。ううん、嫌なら帰らなくてもいい。俺と一緒にいてくれ。」
「ハルが帰れ。」
強い口調に、白摩はその場に縫い止められたように動けなくなる。
「…ミチ??」
「今まで、ハルは僕にどれだけの面倒事を追わせてきたと思う??僕は、もう一分一秒だってハルと一緒にいたくない。だから、ここまで逃げてきたんだ。」
帰れ、と叫ぶ幼馴染に、白摩は戸惑う。
「…ミチ、今まで迷惑をかけたこと、本当にごめん。けど、俺は変わったんだよ。これからはミチを困らせたりしない。優しくありたい。…許せる人に、なりたいんだ。」
「…ハル。」
呟くと、幼馴染はくるりと踵を返す。
「ちょうどいいところに来た、ハル。」
おいでよ、と佐々は肩越しに振り返る。
「少し話をしようじゃないか。」
幼馴染の変容に困惑しつつ、白摩は彼の後ろ姿を追って家にあがる。
「…おじゃま、します。」
薄暗い廊下の先で案内されたのは、大きな客間だった。部屋の金色に輝く置時計は午後二時過ぎを示している。八畳ほどの和室。中央にテーブルが置かれている。入って、テーブル右側の奥に一人のスーツ姿の男性が座布団に腰掛けていた。キョトンとしている二人に代わって、幼馴染は双方の紹介を始める。
「ハル、こちら東堂さん。ローカルテレビ局の関係者だ。偉い人。祖母と親しくしているんだ。…東堂さん、こちらは僕の幼馴染で白摩春太君です。ハル…春太君の歌声は本当に素晴らしいんですよ。」
にこやかな表情で、幼馴染は続ける。
「…彼を売り出し中の歌手としてテレビに出演させていただけませんか。」
_
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
58 / 68