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白摩は目玉が飛び出るくらい驚いて、幼馴染を見つめる。
「…に、言っているの、ミチ。お、俺は人前じゃ歌えない。第一、売り出し中の歌手って何!?」
東堂という男も、動揺を隠しきれないらしい。立ち上がって、若い二人の間に立つ。
「まあまあ、二人共落ち着いて。」
幼馴染は普段は温かな瞳を鋭くしていた。
「僕は至って冷静ですよ。」
そうかい、とあっさり首肯を示して東堂は話を続ける。
「景道君、私達の局は小規模だけれど、それでも立派な報道局なんだよ。カメラに映りたくないという人を無理矢理出演させるわけにはいかないな。法にふれるからね。」
佐々は東堂を一瞥し、新たな来訪者の片腕を掴む。
「…おい、ハル、ここで今すぐ歌え。東堂さんに声を聴かせれば、納得してもらえる。」
白摩はそれどころではない。佐々の腕を掴む力が物凄く強くて痛いくらいだった。
「ミ、ミチ!!腕痛い、手ェ離して。」
「歌えっていってんだろ!!」
怒鳴る佐々に東堂は何やら勘づいたらしい。自分はこれで…と腰を上げる。
「待って下さい、東堂さん。祖母に用があったんでしょう??まだ祖母は帰ってきていませんよ。」
佐々は言いくるめようとしたが、東堂は緩く頭を左右に振って辞退する。
「君のお祖母さんとは、またの機会に話すよ。それじゃあね。」
「待って…待て、待てっつってんだろ!!」
尚東堂を追おうとする幼馴染を背後から羽交い締めにして、白摩は彼を押さえ込む。
「ハル、ハル…っ!!どうしちゃったんだよ、ハル!!」
「うるせぇ、お前は邪魔だ…!!」
幼馴染は白摩を振り切って、彼を畳の上に突き飛ばす。畳に手を付く白摩を、幼馴染は睨みつける。
「何でこの僕が、お前のワガママを一言一句きちんと聞いていたと思う??歯向かわなかったと思う??お前との縁を捨てなかったと思う??」
ぞわり、と白摩の背中が粟立つ。嫌な予感がして、白摩は両手を耳にあてようとしたけれど一瞬遅かった。
「…お前の歌声が、金ンなるからだよ。」
揉み合いで荒くなった息の下。佐々は確かに言い放つ。
「…そんな、ウソだ…。」
呟く白摩の傍らにしゃがみこんで、幼馴染はにこりと笑う。…白摩の大好きな笑顔で、意地悪を言う。
「本当だよ??…お前の歌が金になるから、ずっと黙って従って生きてきた。いつ売り出してやろうかと考えていた。あの薄暗い部屋の中に閉じ込めて、お前を外に連れ出さず誰の言葉にも従わない純粋培養にして…。僕はお前を守っていたんだ、感謝して欲しいくらいだね。」
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