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手探りで携帯を探し当て、びしょ濡れのまま電話をかける。連絡先は、司だった。途中、何度か鼻を啜り、しゃくりあげ、白摩は司にことの経緯を話す。
「俺、どうすればいいと思う??」
相談を持ちかけてきた白摩に、司はポンと返す。
『知らん。』
白摩は、足場がぬかるんでいるにも関わらず、その場にすっ転びたい衝動に駆られる。
「し…知らんって…。」
今までは生死が関わっていたから相談に乗っていたけどな、と司が電話越しに返す。
『今回は、これはもうお前の一存だろ。幼馴染とやらと帰りたいが、相手はお前なんて知ったこっちゃねぇと喚いている。手ェ離すのも握り直すのもお前の自由だろ。』
俺なら手ェ離すね、と司は答える。
『だって、そっちの方が百倍は楽に生きられるし。…大体、迎えに来たお前を無碍に扱う奴なんてロクな人間じゃないって。』
白摩は、携帯を握り直す。…雨でずぶ濡れになっている手から、携帯は今にも滑り落ちそうだった。携帯が防水加工で助かった。
「でも、ああいう時は死にそうなんです。」
『…お前が元自殺未遂の人間だからって、自分を金で売り飛ばそうとする奴の命の心配までしなくていいぞ。』
いいえ、と一端言葉を切って、白摩は首を横に振る。真横に薙いだ髪の先から、雫が宙に飛散する。
「…死にそうに寂しいんですよ。」
誰かが傍にいてあげないと、と話す白摩に司はふんと鼻を鳴らす。
『仏壇蹴り倒したのと同一人物とは思えない回答、ありがとうよ。』
「…その節は大変申し訳ありませんでした…。そろそろネタにして弄るのをやめませんか。」
『嫌だね。この件に関しては、俺が記憶喪失にでもならねぇ限り時効ねぇから。』
茶番を挟んで、司は話を元に戻す。
『…なら、傍にいてやれ。』
白摩は、唇を歪める。
「でも、どうやって…。向こうは俺が近づくのも嫌がっているのに…。」
『だから、てめぇの恋バナなんか知るかっての。てめぇで勝手にやれ。』
言葉を最後に、通話は一方的に切れてしまった。あ、と白摩が声をあげる暇もない。
「…司さん、色恋沙汰苦手なのか。」
意外、と漏らしていると着信が入る。司か佐々か。顔を輝かせて見てみると、画面には『楠田』の文字が表示されている。どうして今、と考えつつ出てみると、楠田の勢いのいい声が耳に飛び込んでくる。
『白摩さん!?あの、俺俺、楠田だけど!!』
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