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さよなら先生
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この冬は去年より積雪も多く、一段と寒かった。
金森悠人(かなもりゆうと)は冬が好きだ。こたつという誘惑に抗わなくていい季節だから。
「こたつで寝るな」
「先生こわーい」
こたつに肩まで飲み込まれ、幸せな眠りに落ちかける悠人を引き止める声がキッチンから飛んでくる。
太堂三郷(たいどうみさと)は悠人の同居人。悠人が通うデザイン専門学校のデッサンの教員である。地元が同じで家族ぐるみの仲だった2人はそれっぽい理由をつけて合法的に同棲している。
「こたつから出なさい、金森くん?」
「太堂先生、僕をこたつから出してナニをするつもりですか!」
「何もしねぇよ。ココア作ったから、飲むだろ」
くだらない会話も、三郷が作ったココアも、気怠くて甘ったるくて悠人は幸せだと感じた。
悠人は空間デザイン学科に所属し、家屋や店舗、さらには図書館等の人が集まる公共施設のデザインを勉強している。将来的には色々な建物のデザインする職に就こうと考えていた。
休日の午後。こたつで恋人と並んで飲むココアがこんなに美味しいなんて…
「三郷の作るココアって美味しいよね」
「ココアはこだわってるから…ミルクパンで温めるし、チョコレート入れてまったりさせるのが好き」
「チョコ…だからなんか濃ゆい感じなんだ」
「多分そう」
三郷は大のチョコレート好きで、チョコのストックは切らさないようにしている。新しい店の情報もいち早くキャッチし、バレンタイン商戦が始まると休日は百貨店やデパートのチョコフェア巡りで大忙し。
「ん〜、眠くなってきた」
「寝てもいいけど勉強しなくていいのか?」
「大丈夫、俺にはつよーい味方がいるから」
「誰だよ」
「三郷にきまってんじゃん」
「そーゆー手助けはしませんって前も言ったろ」
「冗談ですー。あとでちゃんとやるよ」
外はしんしんと雪が降り、街を白く染めてゆく。2人の首元でゆれるネックレスの先にはリングが輝いていた。
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