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死ぬ事にしました
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ホテルを出て、タクシーをひろうために少し歩いていると後ろからいきなり腕を掴まれた。
「麗くん、」
…どうして
「こんな時間にどこ行くの?」
思わず平野さんから顔を背ける。
「か、帰ります…」
「…電車もバスもないよ」
平野さんが掴んだ僕の腕から少し力を抜いた。平野さんの表情は分からない。
「タクシーで、」
平野さんの顔を見ることは出来ない。こみ上げてくる涙を必死に堪える。ここで泣いたら絶対に駄目だ。
「そんなに、俺と一緒に居たくなかった?」
「違う!」
反射的に背けていた顔を平野さんの方へと向ける。
そんなことある訳が無い、僕は、僕は本当は1秒でも長く平野さんと一緒に居たい。でも出来ない。これ以上一緒に居たらもうひき返せなくなる。これ以上平野さんの温かさや優しさを知ってしまったら、僕は一人に戻れなくなる。きっと、死ねなくなる。
想いは沢山あるのに、言葉に出来ない。これ以上平野さんに優しさを求めてはいけない。
今少しでも口元を緩めたら、身体の力を抜いたら、溢れ出る涙を抑えられない。絶対に泣いたら駄目だ。
「麗くん、とりあえず戻ろうか」
ここはホテル街であり、深夜とはいえ人通りはある。
平野さんに手を引かれホテルへと戻る。
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