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同室の檜山君
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「ハァ〜♪今日もお腹いっぱいで、幸せぇ〜♪」
夕祐は、満面の笑みで自分のベッドにダイブする。スプリングがギシギシ鳴って体が揺れるのを気持ち良く体で感じて、掛け布団の中にモソモソと潜り込みまどろみ出す。
今日の学食の夕飯は、夕祐の大好きなハンバーグとコンスープのB定食、付け合わせに出たブロッコリーは、嫌いなので残したが、食後のプリンを3個食べてご機嫌MAX、お腹も満腹。自然と訪れた眠気と戦いながら自室へ戻った。
12畳程の部屋には、入り口から入って、左右対称に置かれたベットとその先に二つの勉強机、突き当たりには、カーテンの付いた窓が一つ。
2人一つの寮の部屋、夕祐は入って右側を使っている。
「おい!火浦!風呂があるんだから、寝るな!」
眠りに落ちる寸前、ワシャワシャと髪をかき回された。
「もー、な〜に〜檜山(ひのやま)君、夕祐って呼んでって言ってるじゃ〜ん、ひなちゃんって呼んじゃうぞ♪」
「グッ…やめろ」
心底嫌そうに顔をしかめたこいつは、同室の檜山日向詩(ひのやま ひなた)可愛い名前してるけど、スマートで体格のいい男、端正な顔のイケメン。武道を色々嗜むらしい体は、細身なのにキレーに筋肉がついてる。
男らしくて羨ましい限り。だが、ぶっきら棒な物言いと、凄みの効いた目が、近寄りがたいらしく、仲良くなるまでは怖いみたい。
僕は初めから怖くなかった。確かに目つきはアレだったけど、彼から出てるオーラ?みたいなのが、彼を物語っていた。
大きくて、温かい。檜山君は、お母さんのようです。
「昨日は、夕祐寝ちまって時間なくて、カラスの行水だっただろ、今日は肩まで浸かって100数えてこい」
「ブハッ、アハハハ、マジお母さん!」
面倒見いいし、気が利くし、何より優しい。
「あ…俺、またやらかした?悪りぃ」
「ううん、僕は好きだよ、檜山母さん」
「弟多いから、ついつい」
檜山君は頭をかいた。
檜山君の所は7人兄弟。兄、姉、弟4人の次男坊。以前同室だった奴に、こんな調子でいたら、母ちゃんみたいでうざがられたと肩を落としていた。
僕はひとりっ子だから、このノリが兄弟になったみたいで心地いい。
「じゃー、肩まで浸かるから、背中洗ってくれる?」
「自分で洗え」
「お、ね、が、い」
大きな目を潤ませて、上目使に見つめる。
「グッ…」
檜山は息を詰め渋い顔をした。
彼は上目使いとか、涙とか、そういうのに弱い。夕祐は同級生だが一回り小さい体に、コロコロ変わる表情、そして大きい瞳、彼にとって夕祐は可愛い子の部類に入る、夕祐は甘え上手だった。
檜山日向詩が何故そういうのに弱いのか、その背景には兄弟が関係あるが、それは後でのお楽しみ。
「…背中だけだぞ」
「やった、檜山母さん大好き」
この学園に来た最大の目的である
戀兎(れんと)との再開は簡単に訪れた。
入学式
戀兎は、新入生の胸に付ける花を配っていた。
『おめでとう』
『れんと』
『え?』
『…久振り、夕祐だよ』
花をつけるために視線を落としていた戀兎が名前を呼ばれて視線を上げると、柔らかい笑顔の大きな瞳と目が合う。誰だかわからないのか、声を出さない彼に、夕祐が名乗ると、彼は目を見開いた。
戀兎の口が、パクパクとして
『…ゆ……う…ちゃん』
と、懐かしい呼び方をしてくれた。
一瞬嬉しそうに見えた表情が、複雑に歪み…眉を寄せて困ったように微笑んだ。
会いたくなかった?
僕は会いたかった。
聞きたいことがあるし。
言いたいことがある。
『ゆうちゃん、大人っぽくなったね』
『かっこ良くなった?』
『可愛くなった』
『えー』
『背はあまり変わらない?』
『伸びました、れんとが伸びすぎてるんだよ』
『ふふ、そっか』
普通に話してくれた。
…でも、
寄せられたシワは、消えることはなかった。
れんとが姿を消す前日。
『れんと大好きだよ』
『…僕もだよ…ゆうちゃん』
そう言った戀兎の瞳は、嘘をついてるようには見えなかった、そんな気がする。
入学式で、一瞬見せた表情。
なぜ転校を黙ってたの?
なぜ連絡を断ったの?
戀兎が僕を、嫌ってるようには見えない。
そんなことを考えていたら、風呂でのぼせてしまい、檜山母さんのお世話になりました。
テヘ。
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