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戀兎の眉
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コンコン
誰かが、僕らの部屋をノックした。
お風呂でのぼせて、ベットでぐったりしている僕には、相手を確かめる余裕がない。
半袖に短パン、おでこには冷たいタオルをのせて、手じかにあったノートで檜山君が扇いでくれていた。
『点呼取りますよ』
扉の向こうから聞こえてきた声に、僕は飛び起きた。
「おい夕祐、いきなり起きるな!」
檜山君の制止をガン無視して扉に飛びついて開け放つ
ガチャッ
「戀兎!!」
「こんばんは、ゆうちゃん」
扉の向こうには僕の大好きな人、戀兎が立っていた。高等部2年生の戀兎は寮長補佐で2年生のリーダー、僕の部屋の点呼を担当していて、毎日顔を見ることができる。
嬉しくてニコニコ戀兎を見つめてるとなんだか急に視界が暗くなった。
「ちょっ!ゆうちゃん!?」
不意に抱き寄せられて、自分が倒れそうになって戀兎に抱き止められてることを理解する。
「ゆうちゃん、真っ赤だよ、熱?」
「有馬先輩、そいつ風呂でのぼせたんです。」
ぶっきら棒な現状報告には呆れたため息が混じってる。
恥ずかしくなった僕は戀兎の首に巻きついて顔を隠す。すると納得したように…
「ああ、そうなんだ、相変わらずだねゆうちゃんは」
僕の背中をぽんぽんと叩いてなだめる戀兎に、〝小学生の頃と変わらない〟って言われてるみたいで恥ずかしいが、正直貧血気味でなんともならない。
「ゆうちゃん…苦しい」
いつの間にか力が入ってたのか、首に巻きつく腕にギブアップだとタップされ、力を緩める。
「ほら、プリンあげるから」
「プリン!!」
「ふふ、今日の夕食約束してたけど行けなかったでしょ、だから、お詫び」
戀兎の手にあったプリンを見つけて、再度戀兎の首に巻きつく
「戀兎!大好き!」
再会してから、こうやって好きだと口にする、普通に話せてるし、夕飯も時々一緒に食べたりする。
まだ、あの日には触れてない。
眉間んのシワも消えない。
「明日は一緒に食べようね、戀兎」
「…うん、呼び出されなきゃね」
戀兎の首から離れると、戀兎は眼鏡を掛け直し、襟を直しながら、眉を寄せて笑った。
「有馬先輩忙しそうですね」
「うん、1年生への生徒会の引き継ぎがうまく行ってなくて、僕、副会長補佐の仕事もあるし」
「…僕も入ろうかな〜?」
僕の言葉に戀兎が困ったように眉をよせる
「…ゆうちゃんには、向かないと思うよ」
「僕だって頑張るよ」
僕が口を尖らせると、戀兎が右手でメガネを持ち上げギラリと光らせる。
「ダァーメ、ゆうちゃん規則とか時間とか守れないでしょ、ドジっ子だし、生徒会は生徒の代表で見本でなければならないから、ムリです。机の上汚い!」
と、部屋の右側の机をビシッと指差す。
「ああ、そりゃ有馬先輩が正しい」
「えー!」
確かにだらし無いのは認めるけど檜山君の即答ツッコミは酷くない!?
「戀兎とひなちゃんのイケズ」
「グッ…」
じっとりと上目遣いで睨むと、檜山君が息を詰めた、戀兎がクスクスと笑ってる。
毎日毎日楽しい、それは本当、でも、戀兎との間にある溝は埋まらない、昔みたいに笑って欲しい、この思いを告げて、この恋が実らなくても、君には心の底から笑ってほしい。
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