アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
たどる
-
「恋愛対象…だよな」
「うん」
「いつからだ?」
「ずっと好きだったけど、一線超えたいと思ったのは、中1の春だよ」
きっと檜山君に曖昧に説明しても意味がない、だからズバッと言葉にした。
「まてまて、…中学…その前?一体いつからだよ」
檜山はよろよろと夕祐のベットに座り込んだ。反動でベットが軋む。
「…出会いは、小1の時。戀兎に声かけてもらって仲良くなった。…大人っぽくて優しくてとっても憧れた。…仲良しだったんだ、戀兎が中学上がるまでは、でも、なぜかぎこちなくなって、同じ中学行くはずだったのに、転校しちゃったんだ、僕知らなくて、電話したら、無視されて、引越しってわけでもなかったから、おばさんに住所聞いて手紙を書いた、返事はなかった」
「…」
「前日まで普通だった、なんかあるかもって思ってはいたけど、嫌われてるなんて思えなくて、あきらめられなくて、毎日考えて、気がついたんだ、戀兎に恋してるって。キスしたいし、抱き合いたいって、それがおかしいのもわかってたけど、一度気がついたものをなかったことには出来なくて。色々調べて、でも、相談できる人いなかった。そしたら、BL好きの女子と知り合って、色々聞いてもらったり、本いっぱい読まされたりして、助けてもらって。…本当にちゃんと悩んだんだ、…それでもたどり着いちゃうんだ、戀兎が好きだって」
「…有馬先輩意外は?」
「ないんだ。…BL好きの子のお兄さんが、ホモの友達紹介してくれて、触りっこ?してみたけど、何にも感じなかったし、片思い中、他いけたらここまで追っかけたりしないよ。…ストーカーみたいだね」
夕祐が困って、鼻先をかいた。
檜山は相変わらず真剣で表情を変えない。
「…有馬先輩は…」
「昨日、告白した。振られたけど…」
「…」
夕祐は顔を上げて天井を眺める。
昨日のことが脳裏に鮮明に現れ、目を細める。
「…届いてない感じだった」
檜山が首を傾げ。夕祐は苦笑いした。
「耳を塞いで聞いてないって感じで、僕と向き合ってくれなかった、男同士気持ち悪いって言うなら仕方ないけど、戀兎言ったんだ、『ゆうちゃんは僕なんかを好きになっちゃいけない、勘違いだ』『ゆうちゃんは、違う、勘違いだ』って、そう言ってた」
檜山は夕祐から視線を床に落とし、頭をかいた。
「有馬先輩は…」
「何か、嫌な目にあったのかもね。男の僕に告白された時点で嫌なことかもしれないけど、戀兎の口から出るのは、僕の恋心の否定、そうあって欲しくない、って感じ?僕を否定してるわけじゃないけど、戀兎は自分を否定した。僕が告白してるのにおかしいだろ?戀兎のこと諦めたくないけど、きっと、今はダメなんだと思って」
「…」
「なんかあったんだ、きっと」
「…お前って恐ろしいよ」
夕祐が檜山の方を見ると、檜山は眉を寄せて、変わらず真剣にこちらを見ていた。
「ふふ、ストーカーだからね」
苦笑いした夕祐に、檜山が首を振る。
「いや、そうじゃなくてさ、お前の話だけじゃ、何もわからないけど。まぁお前の話だけを仮に正しいとして、お前の読みは外れてないと思う。前々から思ってたけど、お前ってエスパーなの?」
意外な返答に目を丸くした夕祐が、自分を否定しないで真っ直ぐ話を聞いて意見してくれる檜山にホッとして、なんだか急におかしくなった。
「エスパーならよかったね。それなら人の心が分かって悩まずに済んだかも。…父さんのお陰かな?」
その返しに、首をかしげる檜山。
「父親?」
「父さん、刑事なんだ」
「へー」
檜山が凄いって驚きの声を漏らし、夕祐は、父親を思い出して笑った。
「忙しい人で、僕と遊ぶ時は必ず刑事ゴッコ、あんぱん持って、母さん張り込んだり、ロボット転がして事件だって言ってみたり。僕を叱る時も、尋問スタイルで、目をそらしたから嘘ついたとか、眉が動いたとか、そのせいかも」
夕祐がおかしそうに語る家族に、檜山は温かみを感じて、ふっと表情が緩む。
「…檜山君って優しいよね」
「俺が?優しくなんかないよ、正直だけど」
本当に驚いたと言いたげに眉をしかめ、笑った。
「ふふ、そうだね、正直、檜山君嘘つかないね」
「お前相手だと見透かされてそうだからな」
「弟達にもでしょ?」
2人同時に吹き出した。あの子たちに嘘が通用するとは到底思えない。
笑すぎて涙がにじんだ、夕祐が目をこする。檜山は夕祐の頭をぐしゃぐしゃっと撫で回した。
「うわっ!」
「はは…。あのさ、俺は気持ち悪いとは思わない。まぁ男同士ってどうなのかなぁ、とは思うけど」
「戀兎だから好きなんだよ」
頭にあった手が肩までおりて、ポンポンとあやすみたいに叩かれた
「…そうだな」
「男とか女じゃなくて、人として戀兎が好きなんだ」
「うん」
「ごめんね」
視線を落とした夕祐の顎をちょんちょんと檜山が指先で上げるよう即す。
顔を上げると厳しくも優しい眼差しと目があった。
「だから、気持ち悪くないって、そりゃお前に今キスしたいとか言われたら、有り得ないって感じだけど、お前が真っ直ぐ恋してる気持ちをキモいとかは思わない。まぁ複雑ではあるけど。お前かチンコ勃てなきゃ風呂には入ってやるよ」
真剣なんだけど、あけすけな物言いに吹き出した夕祐
「ブハッ!あははは、流石檜山母さん、最高だよ」
「ん?そこ笑うところ?」
かっこ良く決めたつもりなのか、笑われて力が抜ける檜山
「…ありがとう」
温かい檜山の手がたまらなくて、涙が出そうになった。
檜山君と同室でよかった。彼に話せてよかった。戀兎とも向き合いたい。戀兎の抱えてるものが何かわからないけど、もう少し時間をかけて、それで望んだ答えがもらえるとは思わないけど、笑ってほしい、あの頃みたいに…
だからいつか、戀兎の気持ちを聞かせて欲しい。
「ねぇ、檜山君、お風呂、いつもみたいに背中は洗ってくれる?」
「ああ」
「頭もいい?」
「…ああ」
「前も…」
「………おい」
「てへ☆」
「洗ってやる」
「あ…ごめんなさい…」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
30 / 72