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執事様と執事
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玖李洲は説明しても説得してもピンズを外そうとした。
だから無理矢理椅子に押さえつけた。両手を頭上で一纏めにし肘を折って頭の後ろに回した。暴れないように纏めた手を下に引けば彼が息を詰め、背凭れを軸に背中を反らせた。
彼の脚の間に立ち、股ギリギリに片膝をつけば彼の動きが完全に止まった。空いている手でチーズケーキをフォークに取り、彼の口へ運べば顔を背けられた。頑なに閉じられた唇を抉じ開けようとそれを追う。
しかし白い獣はどこまでも玖李洲側だったようで。
瞬間ガシャンという音が耳をつんざいた。
一瞬意識をとられてしまえば、その隙をついた玖李洲に押し倒されてしまった。
グッと両肩を地面に押さえつけられ、黒い布が握りしめられ波を作った。
彼の表情は逆光で白く光っていた。
「余計なお世話だ」
そう言った玖李洲は立ち上がるとピンズを外し、上体を起こした俺に投げ付けた。
気が付けば猫も姿を消しており、テーブルから滴る液体がポタポタと地面を濡らしているだけだった。
「どうして俺を頼らない……?いや、この際俺じゃなくてもいい。どうして他人を頼りにしないんだ……?そもそも探そうともしてなかっただろ!それなのに俺の"専属"すら拒絶だ」
アイツは"専属"が必要だったのに。俺に一言も相談してくれなかった。俺が執事クラスだと知っているのだから俺を頼りにしてくれてもいいだろ。だからこちらからその手を掴んだ。
そしてそれは叩き落とされた。
「なぁ、久弥……」
返事の代わりに緑茶を注ぐ音がする。
「それでも俺は……」
玖李洲が欲しい。
久弥が俺を心配するように、俺は玖李洲が心配だ。だから構いたい。面倒をみたい。手元に置いておきたい。守れる権利が欲しい。隣に俺を置いてほしい。
コトッという音に意識を戻された。机には湯気の立っている緑茶が置かれている。
「……一応言っておきますが、私は貴方を欲しいと思ったことはありませんよ」
久弥が言ったその真意が、俺には分からなかった。
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