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陽翔の境遇
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Side haru
俺は今ビルの屋上にいる。仮面を付け、シルクハットを被り、マントを付けている状態だ。
ハ「あそこらへんか。」
勢いをつけて隣の博物館の屋根に跳び移り、二階の窓へ行く。
今回狙う展示品は三階。一階と三階に人が集まっているようで、二階には誰もいなかった。
通風口を開け、そこから三階の展示品の上にまわる。下を見ると予想通り警備が固まっていて、中央には今回の目当てである宝石がケースの中に置かれていた。
ハ「(これくらいの人数なら勢いでいけそうだな。ケースも簡単に外せそうだ。)」
展示品の前に飛び下りると警備員が声をあげる。
「誰だ!」
「しゃ、シャドウだ!怪盗シャドウが出たぞ!!」
予告状なんてものは送りつけていないため、突然の出来事に慌てている様子だった。
煙幕をつくると、手際よくケースを開け、宝石を取って二階へ向かう。
「待て!」
先程開けた窓から外に出て適当な場所で路地裏に入る。
「どこに行った?」
「こっちだ!」
数名の警察官が通りすぎて行く。
ハ「…。」
ハ「(楽勝♪)」
ガチャ
ハ「ただいまー、って誰もいないか。」
俺は橘 陽翔(たちばな はると)。見ての通り怪盗をやっている。両親は交通事故で亡くなって、今は一人で暮らしている。親戚はいない。一時期祖母と暮らしていたが、子どもが先に逝ってしまったことがショックだったんだろう。元々持病があった祖母は寝込んでしまい、後を追うように他界した。
ベッドの上でうつ伏せになる。
ハ「…。」
両親が亡くなった時はやっぱり悲しかった。でも、祖母が亡くなった時はそこまで悲しくなかったんだ。…そういった感覚が麻痺してしまったのだろうか。
ただ思うのは、
“世の中は理不尽だ”
ということ。そして、
“ほしいものは自分から取りに行かないと手に入れられない”
ということ。この二つ目は昔の親友が言ってたことだけど。
だから中卒の俺はアルバイトをしながらこうやって怪盗をしているわけだ。
「(まあ、捕まったところで悲しむ人もいないし。)」
誰かに束縛されることもなく、毎日を悠々自適に過ごしていた。
…あの日が来るまでは。
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