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俺と風紀副委員長-3
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それから百瀬は俺を見つけるたびに話しかけて来て、会話はしていないし喜ばせるような事も何一つやっていないのだが、嬉しそうに笑顔を振りまいて来るようになった。
近すぎる距離が不愉快になった俺が、離れろよとボールペンの先で肩を強く突いた時は、芯は出ていなかったものの相当痛かったはずなのだが、怒るどころか嬉しそうに目を輝かせやがった。
それを見た生徒達が、いつもぼっちで不気味な佐藤にまで優しく慈悲深い百瀬様!と盛り上がってるのが腹立たしい事この上ない。
イラッとするもののもうすぐ中等部は卒業だ。今は一学年200人だが、高等部に上がると倍の人数になる。そしたら百瀬のやつも俺に構ってる暇は無くなるだろう。
睡眠不足が常の俺はいまだにスッキリしない頭を抱えて独り言も多く、変人扱いをされているが、早く400人の中に紛れたいなと思いながら残りの中等部生活を送っている。
学園の昼休みは長い。80分もあるのだが、ぼっちの俺はこの長い休憩時間を持て余している。趣味が読書なので余裕で時間つぶしができるだろうと思っていたのだが、男子校とは言え噂好きの生徒がわんさかいる教室は騒がしく、全く集中が出来ない。
少しでも静かなところを探そうと晴れた日はウロウロしながら、イチャイチャしているカップルを横目に彷徨い歩き、疲れた頃には午後の授業が始まる時間になっているので、不気味なやつが一人で散歩を楽しんでるだけのように受け止められている。
百瀬は昼休みも忙しい。学園内の平和を保つために見廻りをしながら、時には生徒の悩み相談まで受けている。頭の回転が早く機転もきくので、大概の相談事は瞬時に解決してくれると隣の席のやつが言っていた。
「よお佐藤。今日も不健康そうだな。……その、なんか悩み事があるなら話してくれ。俺で良ければ相談に乗るぜ」
「じゃあ……風紀副委員長(おまえ)が話しかけてきてウザいのだが、この世から消えてもらう方法はないだろうか。まあクソみたいな存在を気にするのも時間の無駄か」
「!!!!!」
親身になって悩みを聞いてやろうと言うのに拒絶をされて、学園の人気者がウザイと言われたら流石に気分が悪いだろう。
そもそも百瀬に否定的で酷い事を言うのは学園中探しても俺だけだと思う。
百瀬は顔を赤くしながら黙り込んでしまった。なぜ前かがみの姿勢になっているのかは分からないが、今のうちに逃げてしまおう。
今日もお節介なやつに絡まれたなと早足で歩き出せば、立ち直った百瀬が歩きにくそうに追って来て、更にしつこく話しかけて来る。
「す、すまない。ちょっと、嬉し……ビックリしただけだ。気が向いたらいつでも話してくれ」
さっとメモを握らされて、立ち去る百瀬の後ろ姿を手足が長くてモデルみたいだなとぼんやり考えながらしばらく眺めた後、逆の方向へ歩き出した。
メモには携帯番号が書かれていて、百瀬の番号で間違いないとは思うがかける予定は全くない。
悩み事。相談事か。
俺と兄の関係や家庭を壊した償いをどうすれば良いのかなんて話せるかよ。それに百瀬だって簡単に解決出来ないだろう。
「さーてと。この携番いくらで売れるかな」
物騒なことを言いながら、ニヤけているぼっちの昼休みはまだまだ続く。
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