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俺の不安と嫉妬心-3
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皆が部屋に戻ったあと、部屋単位で順番に大浴場へ入ったのだが、俺のアバラが浮いた体を見て、朝丘が悲しそうな顔をするのが何故か辛いと思った。こいつには健康な体を見せたいと、不思議にもそう思ったのだ。
何人か揶揄うやつもいたが、朝丘と速水に怒られて、恥ずかしそうに謝って来たので、俺にもいい友達ができたかも、なんて微笑んでいたら、ヒイイッと悲鳴をあげられてしまい、慌てて表情を元に戻した。すまん。
神崎と百瀬狙いだったやつらは、二人が現在見廻りをしていて、全員が風呂を入り終わった後、入れ替わりで入浴すると聞いた途端、ブーブーと不満を言い出した。
こいつらに百瀬のズル剥けマグナムを見せなくて済んで良かったと、ホッとする自分の独占欲に驚いた。
朝丘に「虫に刺されてるぞ」と指摘をされたので鏡で確認した俺は、百瀬につけられたキスマークだと分かって赤くなり、泡を落として一目散で風呂から逃げ出したのだった。
風呂から上がって皆がトランプやゲームで楽しんでる姿を、ベッドの上段から見ながらごろごろしていたのだが、急に炭酸飲料が飲みたくなり、散歩がてら自動販売機まで買いに行く事にした。
1階まで非常階段で降り、さてなんの炭酸にしようかなとブラブラ歩いていたら、風呂上がりらしい百瀬に止められてしまった。
「佐藤。夜10時以降は1階には降りられないからな。今の内に買っておくと良いよ」
二人きりなので話しかけてくる声はいつもと同じでかなり甘い。
少し充電させてくれ、と言いながら階段の下に連れ込まれ、監視カメラすら届かない場所だよ、と耳元で囁いて来た。
俺は抱きつこうとした百瀬の肩を押しやって「触るな!」と怒鳴った。
「佐藤……会議室でも様子が変だったよな。なんで触っちゃダメなんだ?」
あくまでも優しく聞いて来る百瀬がやっぱり好きだ。けどこれだけは言っておかないとな。俺は百瀬の性癖を速水が知っているのかをまず確かめようとした。
やはり速水にはあらかた話していると聞いて、分かっていた事なのだが、自分たちだけの秘密ではない事に、少しショックを受けた。
「だったら速水と付き合えばいいだろ。きっと速水なら頼んだら痛めつけてくれると思うぜ。近場で済ませろよ」
ひねくれた言い方しか出来ない俺に嫌気がさして来たが、百瀬は気分を害する事も無くさらりと答えた。
「俺達は従兄弟であって、それ以上でもそれ以下でもない。もし仮に圭介に痛めつけられたとしても俺の性癖上、痛みが快感に変換されるかも知れないが、それによって愛情が芽生える事は皆無だ!」
百瀬は言い切ると、満足気に頷いていた。
「他の奴らにも言える事だ。痛みを与えられてもただそれだけだ。昔のように性的に興奮しなくなったのは佐藤のおかげだよ。俺はお前にしか欲情しないからな」
ーーはあ、まったく。
こちらが恥ずかしくなるほどの、真っ直ぐな気持ちをぶつけて来る百瀬は、天然の人タラシじゃないかと思う。
しかし何故ここで圭介の話が出てくるんだ、と不思議そうに首を傾ける百瀬を見て、話すしかないと思った俺は、川遊びの時岩場の影で二人が抱き合って、百瀬が大切そうに速水の頭を撫でていたこと、それをちょうど見てしまった俺は、二人がただならぬ関係だと思い、二股をかけられたのかと百瀬に腹を立ててしまったことを、洗いざらい話したのだ。
「そういう事か。圭介は子供の頃から貧血でよく倒れるんだ。他にもいくつか持病があって、体の弱い子供時代を送っていたんだよ」
子供の将来を心配した速水の両親が、剣道の道場に通わせた結果、速水はどんどん頭角を現して、二十年に一度の逸材だと褒め称えられるようになったそうだ。ついでに持病もいくつかは克服している。
「体力は付いても貧血だけは良くならなくてな。立ちくらんで悲しむ圭介を励ますために、ハグをしただけなんだ。頭を撫でたのは子供の頃からの癖でそれ以上の意味はないよ」
百瀬の説明を受けながら自分の勘違いが分かると、嫉妬した事まで見抜かれそうで、無性に恥ずかしくなった。
俺の早とちりで悪い方へ考えるのは、度々繰り返す失敗なのだ。いい加減自分でもうんざりしてしまう。
心の動揺を隠しながら、誤解して悪かったな、と言い捨てる素直じゃない俺。
しかし百瀬は誤解が溶けた事を心から喜んでいるようで、人の気持ちの裏まで探ろうとはしないのだ。
「誤解なら何度でも解いて見せる。だから疑問に思った事は何でも聞いてくれ」
言葉の足りない俺は、誰かに確かめる行動すら二の足を踏んで、一人で悪い方向へ考えてしまう傾向がある。それを百瀬が聞きやすい状況にしてくれるんだ。
そんな彼にどんどん惹かれていく自分が怖くなり、その場を立ち去ろうとした。
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