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俺の周りの変化-3
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ここは、第四校舎の空き室。
昼休みになり朝丘と共に昼飯を食っていると神崎が迎えに来たので、クラスのやつらと冷やかしながら朝丘を送り出した。
しばらくテスト範囲の話をしたり、相変わらず繰り広げられている噂話に耳を傾けていると、保険医の白川が俺を教室まで呼びに来た。
珍しいと思いながら付いていくと、副教科が集められた第四校舎に入ってこの空き教室に通されたのだ。白川は真っ青な顔をして「すまない」と言った後、そそくさと出ていった。
教室の窓の前には桜の木が植えられていて、満開時には桜色に覆われてさぞ綺麗な風景なのだろうな。今は桜の花も散り終えて、青々とした緑の葉が夏の訪れを知らせているように見えた。
その窓際には長い黒髪を左サイドでまとめた女顔の生徒が佇んで、俺を氷のような眼差しで見ていた。
「あんた誰?」
なんか厄介な事になりそうだとウンザリした俺がぶっきらぼうに聞くと、窓際にあったパイプイスを優雅に広げて静かに座り、憎々しげに俺を見て来た。
「今年の一年は口の聞き方も知らないようだね。僕は二年の黒田だよ。知ってるでしょう?」
「知らね」
即答した俺に気分を害した男は、綺麗な顔を歪めて開き直ったように話し出した。
「後藤が随分と世話になったね。その節はどうも。彼が僕の指示通りに動く立派な忠犬で良かったよ。ああいった連中が僕の周りには沢山いるんだ」
「へえー。で?」
「言いたいことは一つだけ。同室者と言うだけで大きな顔をしないで欲しいんだ。君がうろちょろとまとわりついている百瀬くんから離れてよ」
後藤といえば俺が尻を叩いたあの大男の名前だ。つまりこの女顔は後藤の主様なのだろう。そう言えば会議室で、一年先輩の黒田という名前を聞いたような気がする。
黒田と名乗ったこのクソ野郎は、朝丘から速攻で百瀬にターゲットを替えたみたいだ。しかし百瀬とは赤の他人を貫いている俺に、知ったふうなことを言いやがる。きっと只の言い掛かりなんだろうな。
「俺が誰といようが貴様には関係ねえだろ。こうやって裏で手を回すしか脳がないのか。かっこわりー」
煽った感はあるが、これでももっと酷いことを言いたいのを我慢したんだ。偉いぞおれ。
「なっ!察しの悪い子だね。今日は一人だけど、僕の言葉が通じないようだから、今度は大勢連れてこよう」
このように周りの手を借りて脅してくる黒田を見ると虫酸が走る。この誰もが自分の下僕だと思い込んでいる痛々しい先輩を、懲らしめてやりたくて仕方がない。
「一人で来たんだ?ぷっ。普通それを敵に知らせるかな?お前バカだろ」
「……っ!!」
俺はつかつかと黒田に向かって歩き出し、逸る気持ちを抑えながら近付くと、黒田が焦って椅子ごと後ずさりながら、気の強そうな目を釣り上げて俺を見上げて来た。
「くーろださん。今から俺といい事しようか」
俺はスマホを取り出し、保存してすっかり消し忘れていた後藤の情けない姿を黒田の前に突きつけると、ニヤリと笑って「このあと随分楽しませてもらったんだぜ」と意味深なことを言ってやった。
後藤の下半身は丸見えだ。これが何を意味するのか黒田には分かるだろう。まあ誤解なんだけどな。まさかお尻ペンペンとは思うまい。
後藤のおぞましい写真は、脅し終えたら全て消しておこう。
「ヒィィ。後藤はそんなこと言ってなかったのに」
「そりゃこんな恥ずかしいこと言えないだろ。自分より遥かにひ弱な俺にあんなことされたらよ」
もう黒田は泣きそうになっている。所詮お坊ちゃま学園の生徒だ。こんなふうに責められて追い詰められたことも無いのだろう。
「何人で来ようと俺は構わない。どんな手を使ってでもお前の破廉恥な写真を撮って、学園中、いや世界中にばらまいてやる」
どこの輩だよ。自分でも汚い脅し方だと思うが、こいつに関わるのはこれっきりにしたいんだ。大勢で来た時は、またその時考えれば良いさ。一度世捨て人の様になった俺にはそうそう怖いもんはねえからな。
黒田は逃げ出したいのだろう必死で立ち上がろうとしているが、腰が抜けてじたばたしているだけだ。
「いいか、もう二度と俺に関わるな」
その瞬間、凄い人数の足音が地響きと共に近づいて来て、俺たちの教室のドアがぶち破られた。
「ひええええええ」
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