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誕生日を祝う-1
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6月13日は、百瀬の従兄弟である速水圭介の誕生日だ。
百瀬も5月末に誕生日を迎えていたが、皆の予定が合わなくて、誕生日会はお流れになってしまった。なので今日、ついでに、気紛れで、おまけとして、便乗して祝ってやることになったのだ。
そんな百瀬は眉毛を八の字にして俺に文句を言ってくる。
「佐藤……俺の扱い、酷くないか?」
「いいから、百瀬と神崎はさっさと仕事を終わらせてこいよ」
めい一杯後ろ髪を引かれていそうな二人を部屋から追い出して、俺と朝丘で完璧にパーティーの準備をやり遂げる使命感に燃えている。友達の誕生日を祝うなんてかなり久々なので俺は朝から武者震いをしていた。どんだけだよ。
俺たち一年生400人が生活をしている寮は12階建てで、最上階以外は全て二人部屋である。最上階の住民は成績優秀者や、スポーツ推薦で選ばれし逸材たちが、一人部屋を与えられている。
成績優秀な百瀬は、本来なら一人部屋に堂々と住めるのだが、本人の希望で俺との二人暮しを選んでいるのだ。
俺なら一人部屋でのんびり過ごしたいけどな、なんてついポロリと本音を出すと、百瀬は情けない顔をした後「ここから絶対に出ないぞ!!」と追い出すとも言っていないのに部屋の入口にしがみついたので、はいはいと軽く受け答えをして放置しておいた。
長く隠しきれるものでも無く、百瀬の同室者が俺だと言う事が学園内にも広まったが、こうなりゃ開き直るしかない俺たちは、質問されても、はあ?だから何?のスタイルを崩さなかった。
このシラを切り通す態度に疲れたやつらが、半ば諦めモードになった所で、むりやり認めさせていったのだ。
うるさい百瀬ファンも、可哀想な俺を放っておけない、ボランティア精神の強い百瀬様の優しさだと言って、渋々納得したようだ。
速水の同室者がかなり大人しくて人見知りだとの情報を得たので、ずかずか上がるのは失礼だと思った俺たちは、今日のパーティーを神崎と朝丘の部屋で開くことにした。
神崎も元々は最上階の一人部屋だが、寮長と話し合って、朝丘との同室に漕ぎついたらしい。愛の力だと王子様は言っていたが……まあそういう事にしておこう。
神崎グループの御曹司である王子様の部屋は白を基調とした家具で統一され、清潔感の漂うゴミ一つない完璧な空間だった。
元汚部屋出身の俺は汚さないように緊張していたのだが、朝丘がなんの躊躇もなくガサツに過ごしていたので、肩の力を抜くことが出来た。
速水にはサプライズするのが当然だと思っていたのだが、自分も手伝いたいと申し出てくれたので、男三人で準備をしようと話し合っている。
とは言うものの、全て出来合いものになってしまいそうだ。俺は貧乏料理しか作れねえし、他のやつらは速水以外料理が全く出来なくて、端から期待はしていない。
誕生日を祝ってもらう立場の速水に料理をさせるわけにもいかず頭を抱えていたら、二年生の姫ことあの黒田がこのパーティーを何処からか嗅ぎつけて、手伝いをしたいと一年の寮までやって来た。
唐揚げ、ピザ、ラザニア、エビフライ、マリネ、ポテトサラダと有りがちな家庭料理ではあるが、短時間でこの大量のものを腕によりをかけて作ってくれるらしい。
ちゃっかり食堂のオバチャンと話をつけて厨房まで借り切った黒田は、本格的な調理器具を使って料理の数々を捌いていった。俺たちは邪魔にならない程度に手伝っただけだ。
何故、あの黒田がこんな事をしているのかと謎すぎるのだが、黒田までがM気質を持っていたらしく、俺に新たな扉を開かされたとかで、やたらと絡んで来るのだ。
どういう手を使ったのか分からないが、百瀬と俺の仲を知っている黒田は、引き裂くどころか絶対に秘密にしておくし、応援しているからと両手をしっかり握って来たので、まあ手伝ってくれるならいっかなあ、と俺は気楽なもんだ。
でも一応は盗聴器などが仕込まれてないか、調べておこうかな。
「黒田。変な気を起こしたら、今度こそケツの穴にぶっといディルドを突っ込むからな」
あえて皆の前で脅したら、お尻を両手で隠して「かしこまりました」と言いながらも喜んでいるようだ。
黒田は許せねえやつだと思っていたが、謹慎処分が解かれると、すぐに俺と白川に真剣に謝って来た。学園側と実家からかなりしぼられて反省したらしい。
それから毎日欠かさず自ら学園中を掃除して、校内を清潔に保ってくれている。その完璧な仕事っぷりは、管理業者も感心しているそうだ。
黒田の取り巻きたちも協力しているので、皆が改心したのだと受け止めておこう。
白川は俺を黒田に売るようなマネをしてしまい、生徒を預かる身として失格だったと嘆き、辞表を提出してしまった。
しかし、藤沢理事長にこうなる経緯を全て話し、白川も不運だったのだと必死で説明する俺に免じて、今回だけは見逃すことにしてくれた。
それでも白川は納得がいかないと、学園を出ようとしたのだが、自分のせいだと反省した黒田まで退学届けを出そうとしたので、仕方なく残る事になった。
保険医を続けるからにはきちんと役割を果たし、応急処置だけではなく、大勢の生徒の相談役として活躍しているようだ。
ただし相談を受ける時は音声なしの動画を設置された監視カメラで撮影するという徹底ぶりで、トラウマを植え付けられたであろう白川が気の毒ではあるが、これで第二の黒田も生まれないだろう。
大男の後藤は厳つい外見に似合わず元来気弱なやつで、あの日の俺が余りにも怖すぎたと言って遠くから見ているが、未だに現役バリバリの黒田公認ストーカーをやっているそうだ。
仲良くするつもりはさらさら無いが、慣れて来たらその内近づいて来るだろう。
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