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初めての外出-2
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寮の廊下を歩きながら、朝丘と今日の予定を話している。俺は本屋のみ用事があるだけだが、朝丘は陸上の新しいスパイクと予約していた特典付きゲームソフト、新作DVDなど欲しいものが盛り沢山だ。
どの店から回れば効率が良いかを相談しながら夢中で話しをしていたので、角を曲がった所で対向者にぶつかってしまった。もちろんひょろひょろの俺は軽くぶっ飛んでしまったがな。
「うわっ、すまん!大丈夫か?」
いわゆるバリトンボイスとでも言うのだろうか。低くお腹に響く渋い声の持ち主を仰ぎ見ると、そこには今朝も見かけたばかりのあの短髪黒髪男が、驚いた目をしながら佇んでいた。
朝丘が慌てて俺の身体を抱き上げると、地面に付いた箇所を払ってくれた。寮の廊下は掃除が行き届いているのでそんなに汚れてはいないのだが、朝丘の親切が素直に嬉しいと思った。
「まったく……もっと食って体重増やそうぜ。な、佐藤!」
「お、おう」
「で、君は確か柔道部の大杉だよな。佐藤は軽いから、想定外にぶっ飛んだだけだ。そんなに心配そうな顔するなよ」
社交家の朝丘らしくぽんぽん話し始めるので、相手も少し面食らっているようだが、俺の無事を確認するともう一度すまなかった、と言って通り過ぎて行った。
謝るのを忘れていた俺が慌てて振り返ると、もう既に彼の背中は小さくなるほど遠ざかっていた。
「へぇ、あいつ大杉って名前なのか。知らなかったって事は外部性か」
俺の言葉に固まった朝丘は、短くため息を吐くとやれやれという表情で、自称物知りらしく詳しく説明をしてくれた。
大杉連夜(おおすぎれんや)は俺の予想とは違い、中等部からの内部生だそうだ。他人に興味が無い俺は、関わった生徒しか名前も顔も覚えていないので、間違いなく話した事は無いはずだ。
早くも柔道部のエースで周りからは期待の星と呼ばれているらしく、他校との練習試合では既に先輩よりも強く、勝利に貢献しているちょっとした有名人らしい。
「あいつあのガタイだろ?結構抱かれたいやつがいるみたいなんだ。けど全て断っているからホモ嫌いのノンケだって言われてる」
「相変わらず詳しいよな」
俺は情報ツウの朝丘に感心しながら最近良く見かける話をしてみたが、大杉なら誠実で真面目が服着て歩いている様なやつだから、心配しなくていいぞと太鼓判を押されてしまった。
「確かに真面目そうだよな。何か俺に言いたそうな気がしたんだが……気のせいか」
「大杉なら襲われてるやつを助ける側で、まず誰かに害を成すことは無いと思うぜ」
相変わらずキラキラ笑顔が爽やかな朝丘に、憎たらしいほど眩しいやつめ、黄金虫かよ、と心の中で悪態をつくと、足早に寮を出てバス停に並んだ。
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