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百瀬の幼馴染-1
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学園の正門前にあるバス停から乗って、揺られる事45分、やっと目的地の街までやって来た。
緑豊かな学園の周りには、お洒落なベーカリーやカフェ、少し割高のスーパーしか無いのだが、この街は多くの在来線の乗り換えが集中している大きな駅があり、都心と変わらない程拓けていた。
朝丘の計画は俺の軟弱な体力を考慮して、荷物の軽いものから買っていこうというものだった。ありがたい。
俺の本は大量に買う予定なので、かなり重くなるからと最後に回ることになっている。
「へぇ。ここって地元に似てるんだな」
「だろ?俺も初めて来た時は、雰囲気も坂が多めなところも似ていて懐かしくってさ。早くもホームシックになったんだぜ」
なるほどな。坂の多い風景が地元を思い起こさせて、ふと懐かしい気持ちにさせられた。地元と言うのは伯父夫婦に引き取られた後、しばらく住んでいたあの街だ。そう長く居たわけでは無いのだが、今ではたくさんの記憶を思い出しているので、地元愛のような感情も持っている。
「佐藤は夏休みはどうすんのさ。地元に戻るだろ?俺はお盆には帰って来いって言われてるから、元気な顔を見せてやろうかと思ってる」
「上から目線だな。ははっ。俺も……帰るよ」
兄とはあの電話以来、頻繁に連絡を取っているし、わだかまりも随分と無くなって来ている。両親とも折り合いが付いた兄は、夏休みに家族4人で集まろうと自然に誘って来た。何とか丸く収まってくれて本当に良かったと思う。
ーー次は、父さん、母さんって呼ぼう。
そう決心すると今まで苦しかった気持ちも消え去って、やり直せる気がして来た。
朝丘のゲームソフトとDVDが一番軽いので、まずはそこから片付けて行くことになっている。かなり大きなビルの中に、朝丘が用のある店が全て入っているらしく、子供の様に目を輝かせた朝丘は早速目当ての商品を見つけると、一目散に向かって行った。
お互い相手に遠慮する事なく好きな様に過ごそうぜと予め決めていたので、時間と集合場所を決めると各々自由行動になった。
俺はゲームはしない……と言うより早い話が苦手なのだ。嫌いという意味では無いので興味はあるし、ネットで配信されているゲームの実況などはよく見るほうだ。
だから買う目的は無いが今後のゲーム配信をより楽しむ為に、少しでも多くの情報を得ようと思い、広い店内をブラブラ歩いていた。
「っ。おっと危ない、大丈夫……か。佐藤」
余所見をしながら歩いていたせいで、また誰かにぶつかりそうになり、慌てて体を捻ったので何とか衝突は避けられた。
そこに居たのは……柔道部の大杉だった。
「又ぶつかりそうになったな。すまん」
謝った俺を見てかなり驚いてるようだ。変人だってきちんと悪かった時は謝るさ。今朝の謝り損ねたことを棚に上げ、俺が少しムッとしていると、大杉が眉毛を八の字にして困った顔をした。
「あの、すまない。佐藤はあまり他人と話さないと思ってたから……失礼な態度を取って悪かったな」
大杉は申し訳なさそうな顔で謝ると、一瞬間があったがじゃあ、と言って歩きだそうとした。俺は咄嗟に腕を掴むと思わず聞いてしまっていた。
「最近よく会うよな。ただの偶然とは思えないんだが……俺に何か用なのか」
「……っ」
大杉が痛そうな顔をしたので慌てて掴んでいた腕を離したが、逃すつもりは無い。俺の不穏な雰囲気に気がついた大杉は、俺の方へ身体を向けると諦めたように話し始めた。
「別に今日は偶然ここに来ていただけだ。ただし学園では、そうだな。お前の事は見ていたよ。どんなやつかと思ってな」
「どんなやつって……お前が他のやつのように興味本位で俺を見てるとは思えないんだが」
大杉が俺の言葉に目を見開いた後、興味はあるさと言うと、固くて大きな掌を俺の頭に乗せてポンポンして来た。子供じゃねえぞ。
「あれ?佐藤じゃないか……それに、大杉も。こんな所で珍しい二人だね。百瀬も来ているんだよ」
「百瀬もなのか。そうか!」
そこに突如現れたのは、美しい顔で明らかに周りから浮いている王子様こと神崎だった。そして百瀬が来ていると聞いて、大杉があからさまに嬉しそうに笑った。
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