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俺の会いたかった人-1
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福島堂は関東でも有名な本屋で階ごとにジャンルが違っており、趣味が違う者同士で来ても各々が楽しめる構造になっている。
俺は予めネットで下調べをしていたので、目当ての階に向かおうと思い百瀬と大杉に伝えると、二人とも付いてくると聞かないので好きにさせた。
「こ、これは……随分と個性豊かな本が多いんだな」
ーーそりゃそうだろ、ボーイズラブだからな。
大杉が手に取った本の表紙は、スーツの男が半裸の少年を後ろから抱き込んである絵が描かれていた。あ、あれ新刊じゃん。後でチェックしなきゃ。
百瀬は二次元には興味が無いそうで、本を見ている俺を見ている。うーん視線が邪魔なんだけど。
「ぬほっ。こりゃ凄いな……うわぁ」
さっきから驚きの連続である大杉は、今度は肌色多めの男同士の絡みを見て顔を真っ赤にしている。
あまりにも初心な様子にこちらがビックリだ。
「まさかとは思うが。大杉って童貞なのか?」
「う、うるさいなっ。ずっと一人のやつを好きでいたんだから当たり前だろ」
更に完熟トマトのように赤くなった大杉が、吐き捨てるように言ったので、無神経だったと思い反省した。
百瀬のことを一途に好きなのは今日知ったばかりだが、好きな相手意外とは体の関係を持たないとは……まるで乙女のような身持ちの固さに感動すら覚えてしまった。
この階はBLをこよなく愛する腐仲間のオアシスだ。当然腐女子や腐男子のお客様も沢山いるわけで、そんじょそこらではお目見え出来ないようなイケメン二人に注目し、早くも豊かな妄想力を発揮して鼻息を荒くしていらっしゃる。
「佐藤。何だか俺たち見られているようなのだが」
大杉が周りの視線に気がついて、おどおどしながら俺に聞いてきた。恥ずかしがる男を見て俺まで妄想の世界に飛んでいきそうになる。
「ああ、気にしなくていいよ。今お前は多くの女性の萌えに貢献しているところだ。堂々とするが良い」
頭にハテナを浮かべた大杉は、それでも分かったと頷いて、首をかしげながらも興味の湧いた漫画に見入っている。
俺も再び本棚に集中して持参しているお金と脳内で交渉しながら、かごの中へお宝を勢い良くポンポン入れていく作業を再開した。
「佐藤そんなの読まなくても、ここに生BLがいるだろ。君の好きなシチュエーションは俺が全部叶えるぞ?」
買い物に飽きて来た百瀬が文句を言いながら俺を後ろから抱きしめた瞬間、周りのお姉さま達から「ふぉぉぉぉおお」という歓声が沸き起こった。
ーー生BLだもんな。そりゃ興奮するさ。
しかも攻めは超絶美形だし、受けは痩せこけた不気味なやつと来れば、こんなマニアックなカップリングはなかなか無いだろう。ぜひ堪能してもらいたい。
そんな盛り上がった周りの熱にも気が付かないマイペースな百瀬は、尚も俺の頭に顔を埋め、密かに腰をグリグリと押し付けて来た。
ーーこいつすぐ勃起するくせに、後先かまわずくっつくんだよな。
案の定、俺たちに気が付いた大杉に再び説教をされてしまい、お姉さま方の「え、修羅場突入かしら?もう一人もカッコ良すぎて滾る!」と言う声を耳にしながらレジへと向かった。
思っていた以上に買いすぎた感はあるのだが、今夜から当分萌えには困らない現実に満足しながら本屋を出ると、神崎達に連絡をして近くで落ち合うことにした。
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