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番外編『弱点』
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「百瀬せんぱーい。これ良ければ貰って下さい!」
まだ幼さの残る顔を桃色に染めた後輩達に囲まれた百瀬は落ち着き払った表情で優しく微笑んでいる。
今日も逞しく頼れる百瀬は学園で大人気だ。外では男女問わず見知らぬ社会人からも言い寄られており、色男のモテっぷりは衰えることを知らない。
「これは何かな?」
「あの、その、僕たちが作った縫いぐるみです」
「手作りなんて凄いね。……有難く頂くよ」
ーーへぇ、器用なんだな。俺なんてボタン付けすら出来ねえから四苦八苦しているのに。ん?ちょっと待て……この後輩って百瀬の親衛隊だった奴だよな。
去年の夏休み前、俺と百瀬が付き合っていることが大々的にバレてからは話し合いの末に無事に解散したはずの親衛隊だが、水面下では再結成しているという噂も聞く。
今年のバレンタインでは媚薬入りのチョコを元親衛隊に贈られた百瀬が通常よりも更に激しくなり、酷い目にあったのは記憶に新しい。
風紀委員の巧妙な話術で聞き出せば、俺を恨んだ犯行だと分かり以後気安く受け取ることをやめていたはずだが、今回はどういう理由なのか簡単に貰いやがった。
これは躾直しが必要だ。
「えっと、佐藤?……怒っているのか?」
だから俺の怒りを買うたびに満面の笑みを浮かべるのはやめい!
授業が終わり寮へ帰った俺が神崎に愚痴ると、秀才は一を聞き百を知った。
ようは今朝方贈られた縫いぐるみを調べると、電波を発信するタイプの盗聴器が仕掛けられていたのだ。
今は物的証拠として学園預かりとなっており、元親衛隊の奴らは藤沢理事長によって厳しく罰せられることになるだろう。
「どうせ怒ってもお前を悦ばせるだけだからな。そんなヘマは今日はしねえから」
穏やかな声を作って静かに話すとあからさまに残念がる変態が情けない。
「何で受け取ったんだよ、馬鹿め」
俺の『馬鹿』という単語に鼻息荒く興奮した百瀬を見事にスルーして、答えなければ今すぐ転室届けを出すと脅せば意図も簡単に吐きやがった。
俺の前ではプライドなど微塵も持たない潔さは評価しておこう。
「縫いぐるみが似てたんだ……佐藤にとても。だから君が相手にしてくれない日はアレにナニを擦り付けてだなーー」
「それ以上は言わせねーよ!」
恥ずかしげも無くペラペラと下半身の処理事情まで話そうとするさまには最早驚きと共に尊敬の念すら湧いてくる。
「今から貴様に最も適した嫌がらせを開始する」
何事にもパーフェクトな結果を出す百瀬も意外な弱みを持っており、時には彼らしく無い行動を取ったりもする。
やつの弱点は相手の痛みだ。
ドMの百瀬は己が負傷することには喜びを感じてしまう稀な変態だが、他人が痛め付けられたり傷付く姿を極端に嫌う。
以前は頻繁に他校の生徒から攻撃されては相手を地に沈めて居たものの、苦しむ姿を直視出来ず随分とストレスを感じていたそうだ。
一番手っ取り早い嫌がらせは俺自身を傷付ける事だが生憎そんな趣味は持ち合わせていない。流石に痛いのは御免こうむる。
俺はやつのもう一つの弱点に目を向けていた。百瀬には口酸っぱく注意をしているが未だに守られていない事がある。
「これは昨日俺が使った高級箸だ。俺の目を盗んで性懲りも無く収集していたのは既に承知している。お前の部屋から取り返して来た」
ガーーンとお約束の音が聞こえてきそうな勢いで悲壮な顔をする百瀬をひと睨みしてから更に追い打ちをかけた。
バキッ
神様!物を大切にしない俺を今日だけは許して下さい。
心の中で謝罪をすると今しがたへし折った高級箸を飲み切った牛乳パックの中に突っ込んでからゴミ箱に捨てた。
明日の朝は燃えるゴミの日なので、今晩見張れば二度と奴の手には戻らないはずだ。
百瀬のもう一つの弱点とは……やつの収集癖を阻止される事だ。精神的なダメージを与えるには最適な方法でもある。
認めたくは無いが絶倫百瀬は夜のオカズに俺に関わる何かしらの物を使用しており、それを没収又は破棄された日には数日間立ち直れない程に落ち込み大人しくなってしまう。
まあ暫くは静かに過ごせるのでそれを知ってからは百瀬のお仕置きのネタとして乱用していたのだが、今日の様子は違ったようだ。
「げっ、何でお前の息子がパンパンに成長してるんだよ」
俺の使用済みコレクションが消滅したにも関わらず、百瀬の股間はショックを受けて萎えるどころか見事に勃ち上がっていた。
「はぁはぁ、佐藤に……嫌がらせを受けていると思っただけで……はぁはぁ、ゾクゾクするんだ」
「なっ!きもっ!」
「おおお!堪んない。もっと俺を蔑んでくれ!何なら踏み付けてくれないか」
ーーダメだこりゃ。
どうやら言葉のチョイスを間違えたようだ。軽く使った『嫌がらせ』というワードがここまで奴の性癖にヒットするなど思いもしない。
こうやって躾をし直すどころか普段よりも興奮度を上げてしまった俺は、この後めちゃくちゃ激しく抱かれてしまい、翌日楽しみにしていた腐男子のオフ会には参加出来なくなるのだった。
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