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3. 舞い上がった不幸のカタチ
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――……
泥に沈んだ鉛のように、重く動かない身体。
少しでも動こうというものなら全身の骨が軋んで筋肉が攣って、痛みという痛みを噴き出して抗議を始める。
目覚めたそこはやわらかなベッドじゃなかった。
冷たくて、硬いものが身体を無慈悲に受け止め、痛む身体を鞭打っている。
「――…ん…?」
見慣れた、砂混じりのタイル。
眼前に映るのは、先週地元で買ったばかりのスニーカー。
首を持ち上げ、辺りをきょろきょろと見まわす。
酷く重くてズキズキ痛む頭が考えることを邪魔しようとするけれど、ここは間違いなく。
「おれの、へや…?」
昨日越したばかりで、まだ荷物も解き終わっていない雑然とした自分の部屋が、そこにはあった。
どうして。
しきりに痛みを訴える身体は、朧気ながらも思い出せる昨晩の光景が夢じゃないって教えてくれているのに。
触れた藤堂の熱。
少し冷たい無骨な、けれどずっと俺を撫でてくれた手。
潤んで霞んだ視界に映る蒼と金の瞳も、俺を呼ぶ低くて甘い声も。
全部、全部。
フラッシュバックする記憶に偽りがないって、刻み込まれた身体は忘れてないって。
叫んでいるのに、どうして。
今俺の隣には誰もいない。
空虚に広がる無人の部屋。
冷たく当たる自分の部屋だけが、俺の前に映されていた。
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