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3. 舞い上がった不幸のカタチ
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それから、一週間。
高校卒業後の春休みは課題も無く本当に何もすることがなくて暇だった。
それは本当ならば好きに遊べて喜ばしいことなのだろうけれど、今の俺にとっては不幸でしかない。
何もせず、時間があればあるほど、俺は藤堂のことばかり考えていて。
何も音沙汰がなく、あれから毎晩あの公園に出向いてみても薄気味悪い暗がりが広がるだけ。
忘れ去られたみたいに、何もない。
その内、ただの夢だったんじゃないかとさえ思えてきて。
けれどその度に、首筋から背中にかけて赤々と、日々薄まっていく所有の証が現実を突きつけてきた。
今はその鬱血の跡だけが藤堂との繋がりを示す唯一の存在で。
段々と消えていくことが、何となく哀しくて。
「バカだろ、俺…」
いきなり男に強姦されたのに、寂しいとか哀しいとか。
そんな感傷に浸って、何を考えているんだろう。
止まらない溜息。この一週間だけでもう何度目か。
そう考えながら、もう日課になりつつあるあの公園への散歩へと向かった。
忘れれば良かったんだ。
悪い夢だったって。
点々と付けられた紅い印も、虫刺されだとか。
適当な理由をつけて自分を騙せば良かったんだ。
そうすれば。
傷付くことなんてなかったのに。
辿り着いた公園で、一週間ぶりに見たその姿は。
ただただ、俺の思考を停止させるものでしかなかった。
一週間前俺たちが会ったあの公園の、あのベンチで。
藤堂は、見知らぬ男に深く口付けていた――…
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