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4. 嘲り笑う偽りの芽
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暗がりに溶け込むようにひっそりと、切れかけた街灯の下でもはっきりと認識できるその姿はもう何度も頭の中に浮かんでは掻き消していたそれそのもので。
見間違えるはずがない、のに。
見間違いであって欲しいと、今の俺は望んでいた。
どうみても俺より、というか下手すると藤堂よりも年上そうに見える男と。
離れてはくっつく、磁石みたいな戯れのキスを繰り返して、微笑み合って。
何だこれ何だこれ何だこれ。
友達の悪ふざけなんて可愛らしいものじゃなくて、親し気に何かの言葉を交わしては微笑んで。
藤堂の手が男の腰に回って軽く身を引き寄せて、そうすると男も藤堂の首に手を回して自ら唇を差し出して。
藤堂が目立ちすぎるせいで霞んでいたけれど、よく見ると男もそれなりに整った顔立ちをしていて、それがまた思いたくもない事実を強調してくる。
そう、まるで。
恋人みたいに。
笑い合って、身を寄せ合って、唇を重ねて。
――…何で。
それは恋人同士なら当然の行為だけれど、それよりもこれじゃまるで、まるで。
俺がただ、弄ばれて捨てられたみたいで。
伸びた影が、両足を地面に張り付けてその場から動くことを許さなかった。
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