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4. 嘲り笑う偽りの芽
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可笑しいことなんか何も言っていない。
俺は何も間違っていない。
なのに。
「っふふ…あはは、ひなたちゃんサイッコー」
「っんだよ…何笑って…!」
「訴える?俺を?どうやって?」
悪びれることなく、可笑しくて堪らないというように目を細めてしきりに笑って。
自分が優位にいると、ひけらかすみたいに。
そして実際、そうだったのに。
バカな俺はまだ気付かなくて。
「どうって…警察に…」
「ふーん、警察……で?何て言うの?男に尻掘られましたって?」
「――っ!そ、れは……っ言う!言ってやる…!」
そう、言える。恥ずかしいとか言っていられないから。
この湧き上がる怒りを抑える為なら、多少の羞恥心なんて捨ててやると、そう思ったのに。
「へぇ…でも残念。勇気出して言ったところで無駄だから恥かく前にやめときな」
「は…?何の脅しだよ、そんなの…」
「はい、ひなたちゃん。これやるよ」
どうせ警察に行かれると困るから適当言って騙そうとしているのだと、笑い飛ばそうとしたかった。
けれど。
藤堂が羽織っていたコートのポケットから何かを取り出して、差し出してきて。
その小さな横長の紙片を見た時。
一瞬で、こいつがどうしてこんなにも上から目線で、余裕ぶっているのかを悟った。
「天宮城朔夜(うぶしろ さくや)……」
それは。
日本はおろか、今や世界でもその名を知らぬものはいないというほどの大財閥の、トップの名前だった。
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