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4. 嘲り笑う偽りの芽
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天宮城グループといえば。
手を出していない業種はないというほど、様々な分野に精通し、そのほぼ全てにおいて成功を収め数々の分野で世界進出を果たし、世界的に有名なブランドとなった一大企業。
噂か事実か、最早この日本国の国家予算よりも多くの資産を生み出しているとさえ囁かれ、世界情勢に詳しくはない俺でも耳に挟んだことがあるほど著名なその社長は。
天宮城朔夜。
メディアの前には姿を現さないことから様々な噂が飛び交っていたが、まさか。
こんな、一般人に紛れているなんて。
一体誰が想像できただろう。
そしてそれが、自身の趣味で男漁りともなればスキャンダルどころの話ではない。
「マジ…かよ…」
渡された名刺を半ば呆然と見ながら呟いたのは、そんな安っぽい感想。
本当に、嘘であって欲しかったのに。
藤堂改め天宮城は、露わにした正体にスッとしたのかやけに清々しい表情で俺ごとベンチに寄り掛かった。
「そ。分かっただろ?お前が警察に行こうがマスコミにリークしようが、俺は金の力でいくらでも揉み消せる」
なんて、汚い。
築き上げた地位をこんなことで発揮して、好き勝手に遊んで。
権力を振り翳して他人の自由を奪う。
「つーわけで。今夜のエサがお前のせいでいなくなったから、代わりに相手して?」
「っどーせ、嫌だっつっても無駄なんだろ…」
「まーな。物分かりが良くて助かるよ、いい子だな」
――悔しい…
こんな最低な奴に、好き勝手されなきゃいけないことが。
こんな奴のことを、この一週間考え続けていたことが。
悔しくて、悔しくて、哀しくて。
言われるがまま、手を引かれるがまま、嚙みちぎりそうなくらい強く唇を引き結んで耐えるしかなかった。
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