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4. 嘲り笑う偽りの芽
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「何でも何も、お前スマホケースに住所書いたメモ入ってたけど?」
「……あ」
「大方引っ越したばっかだから忘れないようにってとこだろーけど、不用心過ぎて笑えたよ」
そういえばそうだった…
これから大学に入学すれば、嫌でも住所なりなんなり色々書かなければいけなくなるだろうと、覚えるまでは持っておこうと思ったのをすっかり忘れていた。
「ひなたちゃん」
「え?――う、わ…!!」
自分の恥ずかしい失態に縮こまっていると、急に足から地面の感覚がなくなった。
代わりに襲う浮遊感と、背中と膝裏に回された太い腕の感触。
急激に高くなる目線で、悟ったのは。
今天宮城に抱えあげられているということだった。
「ちょ…降ろせバカっ!やめろ!!」
「あっぶね、おい暴れると落ちるだろ」
「っわ、バカ!落ちたらどーすんだよ!ちゃんと持ち上げとけよ!!」
「どっちだよ…」
所謂姫抱っこ状態であたふたあたふた。
俺を抱える天宮城も俺も、冗談交じりに言葉を交わして。
ただ、話すだけならこんなにも楽しいのに。面白いのに。
そこに欲が混じるだけで、態度も心持ちも全然違ってくる。
もし、もしも。
こんな風に関わってなければ、普通に気の合う友達とか。そんな関係になれていたのではないか。
――…って、バカバカしい…
頭に浮かんでしまった有りもしない妄想を打ち消す。
もしもも何も、一般人の俺からしたらこいつは雲の上どころか宇宙まで飛び越えそうなほど高く手の届かない存在で。
こいつの気まぐれで自分本位で、最低な趣味がなければ関りなんて有り得なかったのだから。
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