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6. 救いを抱えた到達点
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そもそも人間の記憶領域というのは至極単純明快で、ただ衝撃が強いものが記憶に残りやすいという構造らしい。
だから小さい頃転んで痛い思いをしたことや、幼稚園の先生に叱られた怖さは大人になっても覚えている、と。
そんな幼少期の恐怖体験や痛みですら忘れられないのだから、直近で起こった嫌な出来事をそうそう忘れられないのも無理はない。
忘れろ忘れろと思うことですら、ずっとその出来事を思い返してより色濃く記憶に刻みつけているかもしれないのだから。
だって、悔しい。
全部が自分の思い通りみたいな顔をして、騙して。
思い知らせてやりたい。
あいつがしたことの残酷さを、もっともっと、深く重く、あいつ自身に知らしめてやりたい。
だからその為に、俺ができることは…
「…ぃ……おい、日向」
「ぅん…?」
「ぼーっとしてどうした?入学式の最中からずっとそんな感じだけど、まさか寝不足?」
気が付けば長い入学式もその後の説明会も終わっていて、今は昼休み。
学内の広いレストランで学食のオムライスにスプーンを突っ込んだまましばらく物思いに沈んでしまっていたらしく、向かいに座る幼馴染兼親友が心配そうに見つめていた。
「大丈夫?体調悪いなら言えよ?」
「や、平気……――…奏(かなで)、あの…さ…」
平気と言いつつ平気ではない様子の俺の話に、蘇芳(すおう)奏は静かに耳を傾けた。
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