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6. 救いを抱えた到達点
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奏から聞いた話をまとめると。
まずは相手と仲良くなるところかららしい。
自分の好きなものとかアピールしつつ、性格を知ってもらって、そうして話す中で相手の好きなものを知る。
それから相手の好みに合わせてルックスを弄るなりクセを直したり…
好きの度合いにもよるけれど、俺の目標とする『べた惚れ』には相当の努力と時間が必要なようだった。
「べた惚れって、いわばその人の全部が好きでしょうがないって感じだろ?全部を好きになってもらうってことは、自分が相手の好みそのものになるしかない」
その好みがなかなか分からないから困る、とかなんとか呟いていたのは気のせいということにした俺はさっそく。
奏にお礼を言って、大学が終わるや否や家に帰って部屋の隅に畳んでおいたシャツを紙袋に入れて再び家を飛び出した。
いつまでもうじうじと、膝を抱えて沈んでいる、なんていうのはもうやめた。
悩んだって仕方ない。過去が変えられるなら誰だってそうしたい。
でも現実はそんな都合よくはできていなくて、大抵は思い通りになんていかない。
それを、分からせてやるんだ。
自分の好き勝手にやって、全部全部思い通りで楽しそうに日々を過ごす、あいつに。
思い通りになんかさせない。
俺が、いや多分俺達が味わった苦痛を、あいつにも教えてやるんだ。
復讐から始まる恋の幕開けが、空高く鳴り響いたことを。
俺はまだ、知らない。
天宮城が、もうその痛みも哀しみも、俺なんかよりずっとずっと深く味わって、悩んで泣いて喚いたことも。
まだ、知らなかった。
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