アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
8. 走り出す夜空の下で
-
「ひなたちゃん、嫌いなものってなんかある?」
「嫌いなもの?」
「食べられないもの。アレルギーとかさ」
逆上せた熱っぽさも大分抜けた頃、二人してリビングへ向かう最中投げられたのは随分と気の抜けた声音だった。
俺の言ったことなんて微塵も気にしていない、というか気にも留めていないと示す反応に、あれだけ昂っていた自分の熱意がどんどん冷めていくのを感じる。
意気消沈、とまではいかなくとも確実に鎮火されつつある決意の炎。
あんなに意気込んでいたのが自分でも嘘みたいだと、しゅーんとしながらてくてく歩く。
「アレルギーはない。食べられなくはないけど嫌いなのは、苦いのと、ニンジンにセロリにピーマンに…っていうか大体の野菜。あとシソとかハーブ系もダメで…あ、あと梅も嫌いで……あとは…」
「もういい分かった、分かったから。じゃあ何食いたい?好きなものは?」
「何だよまだ言ってる最中なのに……んーっと、昼はオムライスだったから…肉食いたい」
「…お子様だなー……」
「うるさい、いいだろ別に」
自分から聞いたくせに文句を言うなと尖らせた口は、にゅーっと両頬を指で摘ままれて咎められる。
「ははっ、変なカオ」
「おまへのへいひゃろっ!」
理不尽な言いようにお前のせいだろ、と言いたいのにタコのように縦に伸びた口では上手く言えず、そんな様子にさらに天宮城は頬を緩ませる。
自分勝手に悪戯して、独りでに笑って。子供はどっちだ、バカ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
55 / 286