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8. 走り出す夜空の下で
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壁掛けの照明をキラリと反射させる長い廊下を抜けて階段を下り、お洒落な曇りガラスの嵌められた扉を押してリビングへ入るとその横をすり抜けて天宮城はキッチンへ消えて行った。
その後ろを付いて行って同じようにキッチンに入ると、天宮城がなにやら悩まし気な顔をしていた。
「何?なんかあった?」
「いや、肉ないなーと思って。そういえば最近外食ばっかだったから、冷蔵庫の中身ほとんど空だったの失念しててさ」
空って、そんなクローゼット並みにバカでかくて業務用みたいな冷蔵庫の中が空っぽってことか。電力の無駄遣いもいいとこだろう。
「何か適当に食えるもんないの?パンとか」
「いや……今酒くらいしか置いてないかも」
「マジか。お前どういう生活してんだよ」
「ひなたちゃんがそれ言う?前お前ん家行った時、冷蔵庫の中さけるチーズとオレンジジュースしかなかったぞ」
「何勝手に見てんだよ!!」
送り届けてくれたことだけは親切だと思っていたのに…
段々と読めてきたがこいつ実は凄い悪い性格してるんじゃないかと思い始め、そういえば思い当たる節がゴロゴロある。
「勘違いすんなよ。あの程度で二日酔いするとも思ってなかったけど、念のため胃に優しいスープかなんか作っておこうと思っただけ。つっても、あれじゃなんも作れなかったからな」
「へ……あ、そう…悪い…」
「っていうのは冗談で、本当はお前送ってたら喉乾いたから何かないかなーと思って冷蔵庫見てた。オレンジジュースなんて甘ったるいもんよく飲めるな」
「――……」
こいつ…
どっちか本当でどっちが冗談かなんて言わずもがな、後者が『嘘』だ。
素直に親切したのを認められないのか変に隠そうなんて、嘘を吐き続けられてきた俺には通用しっこないのに。
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