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8. 走り出す夜空の下で
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どうして富裕層の乗る車というのは黒いのか、そう思いながらやはり黒い天宮城の車に乗り込む。
ただ、よくあるような専門の運転手という人はいなく、天宮城自らがハンドルを握っていた。
「…左ハンドルじゃないんだな」
「日本で左は運転が面倒だからな。右折が見づらい」
「ふーん…」
もうすっかり暗くなった夜道を、夜の色を塗ったような黒い車が進んでいく。
帰宅ラッシュの過ぎた時間帯、大分道も空いてきていてスイスイと流れていく景色。
天宮城の趣味なのか、車内は大人しめのジャズがかかっていて、ゆったりとしたピアノとサックスの音色が心地よかった。
「ひなたちゃん、さ…」
「うん?」
「どこまで本気?」
目を閉じて穏やかな空気に浸っていると、不意にかけられた言葉。
ちょうど赤信号で停まり、天宮城は前を向いたままチラリと横目で俺を見た。
金と蒼の双眸が赤に濡れるさまは息を飲むほど綺麗で、思わず言葉も失ってじっと見つめてしまう。
「……ひなたちゃん?」
「っへ…?あ、悪い……ぼーっとしてた。何?」
「ふは、見蕩れてんじゃねーよ」
「違っ…くは、ないけど……」
「うん、素直。それで?さっきの言葉、どこまで本気なの?」
さっきの、というと。
それはきっと、『お前の最後の相手になる』という高らかな宣戦布告のことだろう。
そんなもの、疑うまでもなく。
「全部、本気だよ」
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