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8. 走り出す夜空の下で
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人間は視覚から得る情報量が87%、という説がある。
それは目を閉じて生活をしてみれば一目瞭然、自分が今どこにいて何を触っているのか、分かった方が凄い。
そして、人間の第一印象、ファーストインパクトも見た目が9割と言われていて出会って10秒で見定められる、なんてこともあるらしい。
「…それ久々に見た。お忍びかなんかなの?」
たっぷり30分かけたドライブの末ようやく目的地に着いたと思ったら、駐車場に停めたまま天宮城はいそいそと、いつか見ただっさいビン底眼鏡につばの大きな帽子を準備し始めた。
「忍ぶって言えばそうかもな。でも、ひなたちゃんが思ってるのとは違う。別に素で出歩いても俺、身バレしないから」
「あっ……そっか」
俺はこいつが天下の『天宮城朔夜』だと知っているから、芸能人によくある、街中で黄色い奇声を発するファンに囲まれる、みたいなのを想像したけれど実際はそうじゃない。
メディアから遠ざかるこいつの姿を知っているのは直接面識があるほんの一握りの幸運な人間だけ、俺のように特殊な出会いをしていなければ一般人は知る由もないことだ。
しかも、思い返せば最初は偽名を使っていた。
適当に出会った人皆に素性を明かしている訳じゃないのなら、俺は多分とても珍しい、『天宮城朔夜』を知っている内の一人になるのだろう。
そう考えると何だか。
自分は『特別』な感じがして、それがどうしようもない自惚れであったとしても少しだけ、優越感に浸ってもいいと思った。
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