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8. 走り出す夜空の下で
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通された個室は和室で、畳の上に敷かれたふかふかの座布団に、二人向かい合って膝を付いた。
俺にとっても天宮城にとっても、ようやくありつける食事のはずが。
先ほどの騒動のせいで揃ってヘトヘトになってしまっている。
「外出るなら顔くらい隠してよ、営業妨害で締め出すよー?」
「隠してたって。このイタズラ猫が粗相するまではな」
「う……ごめん…」
ちょっと困らせてやろうくらいの軽はずみな行動が、まさかここまで大迷惑を呼び起こすとは思っても見なくて。
居た堪れなさと居心地の悪さでもう空腹なんて吹っ飛びそう。
「それでも、無理矢理奪い返せばいいものをそのまま入ってきちゃったんだから自己責任でしょう?こうなるの見越して放っておいたんだよね、相変わらず性格悪いなー」
「まーね」
「っは…?」
「ひなたちゃん、ちょっと生意気だったから。お灸据えてあげようと思って」
「はー…酷いことするなぁ。嫌になったらさっさと捨てちゃっていいからね、日向君」
あ、れ……?
見た目通り爽やかな店長さんは、気付いていないみたいだけれど、今。
また天宮城は、嘘を吐いた。
「日向君?どうかした?調子悪い?」
「今度は人に酔ったの?ひなたちゃん」
「や、大丈夫……」
あぁ、多分。
俺今、また庇われたんだ。
俺が勝手な嫉妬をして、天宮城のことをよく考えもせずにイタズラをして。
その結果天宮城にもお店にもお客さんにも、たくさん迷惑をかけた。
確かに天宮城が無理矢理奪い返せば事足りたのかもしれないけれど、あの時。
店の戸を開けたのは俺で、そんな余裕はなかったんじゃないか。
俺の招いた失態と、迷惑を全部。
肩代わりして、悪者に成り代わって、持ち去ってしまう。
「……天宮城、ごめん…」
いつだったか、天宮城に子ども扱いされて怒ったことがことがあったけれど。
天宮城といると自分が本当に、バカでどうしようもない子供そのものな気がした。
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