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8. 走り出す夜空の下で
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店長さんはその後すぐに呼び出しがかかってしまって、俺達の注文を聞くなりさっさと去って行ってしまった。
狭い個室に、二人きり。
襖で遮られているとはいえ、隣の部屋から賑やかな笑い声が絶えない中、対蹠的に無言で磨き抜かれたテーブルと睨めっこして沈むこの部屋。
そんな張り詰めた緊張感を裂いたのは、目の前でお冷のグラスを傾ける天宮城だった。
「…ひなたちゃんって……意外と、素直でいい子だね」
「はぇ……」
「基本生意気で口悪いけどな」
まさかこの雰囲気の中そんな言葉を貰うとは思っていなくて、不意打ちの誉め言葉に不覚にもきゅん、と心が歓喜してしまう。
人から褒められるのにはあまり慣れてない。
いい子だね、偉いねって言われても、俺は。
それが嘘ならすぐ、分かってしまうから。
「ふ…ニヤケ顔キモいよ、ひなたちゃん。そんな嬉しかった?」
「う…うるさい…!」
ついつい吐いてしまう悪態に、本当に俺は素直なのかと我ながら疑問。
でもそれを言うなら天宮城だって同じで、褒めると同時に貶しもした辺りやっぱり純粋に親切をするのは苦手なんだろう。
立場も性格も、全然違う俺達だけれど。ほんの少し。
似ている部分も、あるのかもしれない。
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