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9. イタズラ心の意趣返し
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心がどれだけ意地を張って突っ張っていても、結局身体は正直。
俺が一瞬も目を通すことなく天宮城に勝手に決められたメニューに不服を感じていたものの、実際に出てきた山と積まれた肉を見ればもう頭の中は幸せのファンファーレに踊り狂った。
高い肉なんてそうそう食べたことも無く、脂の入り方だの言われてもよく分からないけれどなるほど、口に入れれば分からざるを得ない。
ほんのりと甘さのある上質な脂と、やわらかくほろほろの食感。
それが大皿に山盛りなんて、物凄い贅沢…
さらには天宮城が教えてくれたように、卵の黄身だけを落として溶いた中にささっとくぐらせれば頬が緩んで仕方なかった。
お腹も心もいっぱいに満たされて、文字通り心行くまで堪能する間中天宮城に笑われ続けたがそれも、この上なく美味しいもののお陰かあまり気にならなくて。
「お手洗いあっちだから」と示されるまま天宮城と離れ、戻ってくるときには会計が済んでいるというシチュエーションに出くわしてやっと、天宮城が俺にメニューを…というよりも値段を見せなかったと思い至った。
「はー……お腹いっぱい…」
「ひなたちゃんホントよく食べるね…そんな細っこいのに一体どこに入ったの?」
「第三の胃袋ー」
「第二はもういっぱいなんだな…」
帰るときはちゃんと変装をしていたからか、ちょっと注目を浴びるだけ。
本当は来るときもこうやって視線を集めるだけで終わったはずなのに、俺がバカなことをしたから…と考えるとまた憂鬱な気分になりそうだった。
それでも何も気にしないでいてくれる天宮城を、いい奴だと思ったのも束の間。
それがとんでもない思い違いだと、知ることとなる。
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