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11. 振り向かない恋の花
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「どうした?またぼけーっとして。そんなにどの授業取るか悩んでんの?」
「え、や……そういうわけじゃ…」
昼休み、大盛りのカツカレーを平らげた俺達は食堂で履修する授業を決める為、広辞苑並みに分厚く重たいシラバスと睨めっこしていた。
けれどあまりにも小さい文字の羅列との格闘は、本嫌いな俺には難易度が高く、いつの間にか意識が遊びに出かけてしまったようだった。
「ふーん……ちょっと見して」
「あっ」
ダメという暇もなく登録用紙をかっさらった奏が、目を走らせた直後に苦い顔をする。
理由は、まぁ分かっているけれど。
「日向、経営学取る気…?これ無茶苦茶先生厳しいし課題多いって噂されてるやつじゃん」
「ん、まぁ……いっこくらい頑張ってみよっかなって…」
風の噂、ではなく誰かが先輩から伝え聞いてきて広まったらしいその確たる話のせいで、誰もが遠ざけようとしている経営学の授業。
そんなもの、めんどくさがりの俺がまともに受けるとも思えないし、そもそも一限だから朝起きられるかすらあやしいところ。
赤点か、もしくは出席日数が足らないか、どちらにせよ単位を落とすであろうことが明確だと奏も思っているのだろう、渋い顔のままウンウン唸っている。
もちろん俺だって、普段ならちょっと頑張ってみようとすら思わない、けど。
経営、という言葉に、少し。ほんの少し、朔夜を重ねてしまった。
一大企業の社長なんていう、遠い遠い宇宙の果てのさらに上、もはや追いつけない場所にいるようなアイツに、ほんの一ミリだけでも。
「…近づけたらいいな……」
「――うん?なに?」
怪訝な声で訊き返す奏に、何でもないと首を振る。
面倒な授業をとりたい本当の理由は、この幼馴染にも、内緒。
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