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11. 振り向かない恋の花
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厳しい授業をわざわざ受けるのだから頑張るのは当然で、だから騙した訳じゃない…と思いつつ、やはり心の苦さは否めない。
小さい頃からずっと頼りっきりで甘えてきた奏相手に、隠し事をしたことがどことなく後ろめたかった。
「…ま、日向は昔から変なとこで真面目だからな。俺も付き合ってあげる」
「へっ…?何で、別に俺一人でも…」
「どーせなら二人で遅刻して、二人で赤点補講受けようぜ。その方が気楽だろ?」
ひったくった用紙を俺に返却しながら、向かいで爽やかな笑顔を浮かべている奏は、本当になんでもなさそうに言う。
けれどこれじゃ、俺のわがままに無理矢理付き合ってるみたいじゃないか。
今までだって散々わがまましてきたんだし、そろそろ俺も一人で……なんて、考えていた自分がバカだったのだ。
だって、だって。
元々奏は、俺と同じ授業を取るつもりだったから。
登録用紙を見たあの動作は、俺がどの授業を取るか相談に乗ろうとしたんじゃなくて、ただ。
俺と同じ授業を取る為に、俺に合わせる為に、やったことだった。
ずっとずっと前から、そうやって全ての基準を『俺』に合わせていたことを、俺はまだ知らなくて。
優しくて心配性な『奏お兄ちゃん』の、「日向は危なっかしいから」っていうほわほわした笑顔に、言いくるめられてしまった。
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