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11. 振り向かない恋の花
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そうして二人揃って提出した履修登録。
各講義で指定している人数より多い登録希望者がいた場合は抽選ということになるけれど、先輩からのアドバイスやら奏の事前チェックやらでむしろ空いてそうな講義しかとっていないはずだからきっと大丈夫。
目先の片づけ事が終わり、今日はこれで帰るのみ。
サークルの勧誘やゼミの応募などでまだ和気藹々としているエントランスを抜け、二人並んで校外へ出る。
「そういえば。母さんからちゃんと飯食べてるかって連絡来てた」
「おばさんから?心配いらないよって今度返しとく」
奏の言う母さんとは、当然ながら奏のお母さん。
奏の心配症と世話焼きの遺伝子はこの人から、と思うくらい良くしてくれて、ちっちゃい頃からずっとお世話になってる大切な人。
「つーか、ちゃんとしたもん食べさせてるかーとか、お隣さんとかご近所トラブルないかーとか。俺そっちのけで日向の心配ばっかしてるよ」
「おばさん俺にべったりだったから……」
「案外寂しいのかもな。ゴールデンウイーク辺り帰るか?」
「そーだな。俺も会いたい」
そういえば最後に会ったのは高校の卒業式だっけか。
引っ越しの日はおばさんが仕事で家空けてたから、手紙だけ置いていったんだった。
突然訪ねても、何日も家に居座っても、文句一つ言わず迎えてくれた、凄く凄くあったかい人。
何度、思ったことだろう。
おばさんが、俺の母さんだったら良かったのに…って。
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