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11. 振り向かない恋の花
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二人揃って大学からほど近い物件を探したため、帰宅路はほとんど同じ。
同じアパートでも良かったのだけれど、そこは俺の一人立ち精神によって道を挟んだ別々のアパートにした。
これだけ近いならどっちにしろ一人立ちとは言えないのではないかと思うけれど、やっぱり奏と離れるのは心細い部分があったから、かもしれない。
「それじゃーま、とりあえず日向、今日ウチで夕飯食べてって」
「え!?」
「ちゃんとしたもん食べてるとこ撮って送っとかないとさ、いい加減朝っぱらから『ひーくんは元気?』って聞かれるの嫌だから…」
「あ……なんかごめん…」
「じょーだんだって。昨日圧力鍋買ってはしゃいでたら色々作りすぎたんで、消費手伝ってよ」
日向の好きな煮込みハンバーグもあるぞーって、好きなものに釣られてしまった俺は、こうやってまた奏の巡らせた策にハマってしまう。
そもそもいくら料理好きな奏が鍋を新調したからって、あれだけ普段しっかりしていて一人分を作るのにも慣れている奏が、作り過ぎた、なんて。
冷静に考えればちょっとおかしいかなって。
それでもやっぱり、慣れ親しんだ『お兄ちゃん』にくっついていれば、何も心配することはないって、思ってしまう。
奏は絶対に俺を傷付けたりしないから。
何があっても俺の傍にいてくれる、唯一絶対の味方。
だから、上手く家におびき寄せられたとしても、それも奏ならいいかって思えるだけの安心があった。
例えそれが、奏によって刷り込まれた思いだったとしても。
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