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11. 振り向かない恋の花
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レストランにあるような、ホワイトソースが綺麗にかかった柔らかくしっとりとした煮込みハンバーグに、俺好みに少しだけ甘めに味付けされた温野菜サラダ。
それから、奏の得意な鳥手羽肉の甘辛煮と、新じゃがのたっぷり入った肉じゃが。
野菜嫌いな俺に気を使って、とろとろになるまで煮込まれたオニオンコンソメスープ。
さらにデザートに、生クリームを大量に使った奏お手製なめらかプリン。
でっかいタッパーに詰められていたそれらを温め直す間中、ふわふわといい匂いが漂ってきて、奏まだー?と背中にくっついて子供みたいにせがんでしまうくらいには、美味しそうだし実際美味しかった。
テーブルが皿で埋め尽くされるほどだったはずなのに、ペロリと平らげて今は空っぽ。
昔から大好きだった奏のプリンまで綺麗に胃の中へしまって、食後のティータイム…ではなくリンゴジュースタイム。
「お腹いっぱいでしあわせ……」
「ほんと良い食べっぷりするよなー日向。作り甲斐あるからいいけどさ」
「んー……そういえば奏ってさ。何で料理始めたの?」
「えっ」
何気ない質問のはずが、何かまずいことを聞いてしまったのかと思うほど目に見えて動揺する奏。
やっぱり答えなくていい、と言う直前、返ってきた答えに今度は俺が動揺する番だった。
「日向のため」
「ふぇっ?俺?」
「うん。――……日向の周りを、日向の好きなもので囲んでいけば、さ……俺のこと、嫌いにはなれないだろ?」
そう呟く奏の表情は、なんだか今までの『奏お兄ちゃん』とは違って、どこか自嘲するような、何か思いつめたような。
そんな顔を、するから。
なぜか、奏が少し遠くの存在に感じられて、思わず口走ってしまった。
「そんなことしなくても、俺奏のこと嫌いになんてならない」
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