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11. 振り向かない恋の花
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人はどういう時に人を好きだと思うのだろう。
甲斐甲斐しく自分の面倒を見てくれた時。
優しく笑いかけられた時。
自分のことのように、心配してくれた時。
それは全部、奏に当てはまることで、でも。
こんなことで、俺は奏を慕っているんじゃない。
まして、俺の好きな料理を作って、甘やかしてくれるからなんて、そんな陳腐な理由じゃない。
「奏のこと…俺、嫌いに思ったことなんて一度もないよ」
奏は、俺が一番辛い時にずっと傍にいてくれて、それからも絶対に離れないでくれて。
どんなことがあっても俺の味方で、俺を一番に考えてくれる。
そうやって、ずっと前から俺を守ってくれた。
「嫌いになんて、なれる訳ないだろ」
こんなにも、大事な人なのに。
「――…日向はさ、嫌いにはならなくても、それが『好き』には変わらないね、ずっと」
「………え…」
身体が浮いたと、思った時には背中がふわふわのカーペットにくっついていて。
極々、自然な動作で、いつの間にか押し倒されていた。
天井と共に見上げる奏は、逆光のせいか表情にも雰囲気にも陰りを帯びて、押さえつけられた訳でもないのに凄く、重く感じる。
拘束もされていなければ体重をかけられている訳でもない、ただただ倒されただけのはずなのに、俺の顔の横に手をついて半身を屈める奏から、逃げ出せなかった。
「俺はね、日向。日向から離れるつもりは微塵もないんだよ。――…でも、日向はそうじゃない」
「な、に…言って」
「いくら俺が日向から離れなくても、日向が俺から離れる日が来るかもしれない。俺はそれが一番怖い。だから…ね、日向」
このまま、どこへも行けないように閉じ込めちゃおうかって、ふ…と微笑んだその声は、とても。
冗談には、聞こえなかった。
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